しかし、これからの金融業界を変えるのはGAFAだけではない。仮想通貨の交換所サービスをネット上で行っているベンチャー、コインベースもそのひとつだ。『銀行を淘汰する破壊的企業』の著者で京都大学特任准教授、ベンチャー投資家でもある山本康正氏は、「同社にはウォールストリートや兜町をがらりと変えてしまうポテンシャルがある」と語る。コインベースとはどんな企業なのか、解説してもらった。
事業を拡大するコインベース
コインベースは、ビットコインやイーサリアムといった仮想通貨の交換所サービスをネット上で行っているベンチャーです。

収入は売買手数料ですが、一般的な株の売買手数料に比べ、現時点で仮想通貨の手数料は場合によっては数%と、かなり高く設定されているケースもあり、急成長を遂げています。
そのためコインベースの他にも、クラーケン、バイナンス、ビットフィネックス、フォビ・グローバルといった、同様のサービスを手がけるベンチャーが、仮想通貨の広まりと併せて、主にアメリカで次々と生まれています。
現時点では、コインベースはあくまで仮想通貨の交換事業しか手がけていません。しかし私は、これから先は仮想通貨に限らず、株式、FX、外貨など、デジタル通貨全般といった具合に、取り扱う商品を増やしていくと予測しています。
理由は規模の経済です。投資家にとっては、いくつもの接点で取引するよりも、一つの窓口で多様な商品を扱えた方が便利だからです。彼らの技術力ならびに体力を見ても、十分にできる余地があります。コインベースが扱う仮想通貨の取引量や金額は、すでに日本の証券取引所のそれに匹敵しつつあるからです。
もう一つ、理由があります。コインベースのメンバーの顔ぶれです。コインベースを共同創業し退社はしましたが、取締役に残っているのは、ゴールドマン・サックスで為替のリーダーをしていたフレッド・エサン氏という人物です。株主には、タイガー・グローバル・マネジメントというヘッジファンドもいます。
つまり、金融を熟知している人材がこれまでリアルかつ中央集権的な構造からつぎはぎで進化した金融ではなく、最初からデジタルで新しいサービスを提供していく。このような明確な意図のもと、創業されたと思えるからです。
彼らは金融の知見がありますから、私が紹介した以上に、多様な金融サービスを展開する可能性も十分あると考えていますし、楽しみでもあります。
コインベースはすでに日本にも進出していますから、日本においてもさらなる動きを計画していることでしょう。