2021.07.01
# 宇宙科学

「火星移住」本気で進めるイーロン・マスク。だが、惑星移住の本命は、まさかの「金星」だった!

イーロン・マスクの火星移住計画は片道切符

21世紀のお金持ちは宇宙を目指す。2021年6月7日、アマゾンの創業者であるジェフ・ベゾスは自分の経営するブルーオリジン社のロケットで有人弾道飛行を行うと発表した。弾道飛行とは大砲の弾のように大きな放物線を描く軌道で飛ぶことだ。弾道軌道に沿って飛ぶ宇宙船は、宇宙に向かって行くというよりも、地球と宇宙の境目まで飛んで、地球へと落ちてくる。

ロケットの打ち上げから地上への帰還までが90分、そのうち、宇宙を眺め、無重力を楽しむ時間は5分程度と思われる。

今回がブルーオリジン社の開発したロケットによる初の有人飛行だというから、社長というのも大変な仕事だ。

これが成功すれば(もし成功しなかったらアマゾン社は創業者を失い、大変なことになる)、富豪たちの宇宙ツアーがブームになると思われる。費用は25万ドル前後、中古マンションの値段で宇宙を体験できるなら安いものだと彼らは思うかもしれない。

 

ジェフ・ベゾスのロケットは観光レベルだが、電気自動車メーカーのテスラを率いるイーロン・マスクの夢はもっとはるかに大きい。火星に移住しようというのだ。

イーロン・マスクの持つ航空宇宙メーカー、スペースX社とXプライズ財団(競争的資金による技術革新を推進する財団)の計画では、火星と地球が最接近する2024年をもっとも野心的な目標としつつ、2026年までには火星までの有人飛行を成功させるという。そして最終的には火星に恒久的な基地を作り、人が暮らせる植民地を作るのだという。

宇宙進出の夢を語るイーロン・マスク [PHOTO]gettyimages

簡単な挑戦ではないことは、当のイーロン・マスクが一番よくわかっている。

スペースX社のカンファレンスで、同氏は火星移住の危険性について、「参加者が死ぬ可能性は高い」と述べている。火星には探査機以外がたどり着いたことはなく、探索範囲もごく限られている。移住となった場合、どのような事故が起きるのか、想像もつかない。

しかもロケットが火星に着いても帰りの燃料はない。

スペースX社は火星の二酸化炭素と水(地殻の中に岩石に含まれる形で残っていると予想されている)から帰りの燃料を合成するとしている。岩石に水が含まれているというのはあくまで予想でしかなく、技術的に抽出可能かどうかもわからない。

つまりイーロン・マスクの火星行きのチケットは、観光旅行などではなく、地球へ戻ることのない、死出の旅への片道切符だと考えた方がいい。

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