2021.07.01
# 宇宙科学

「火星移住」本気で進めるイーロン・マスク。だが、惑星移住の本命は、まさかの「金星」だった!

川口 友万 プロフィール

私たちは多惑星生命体を選択するのか

宇宙進出の課題はいずれ解決されるだろう。一番の問題は放射線の健康被害だが、防御がままならないなら、宇宙船の速度が上がれば移動中の被ばく量を減らすことができる。

現在、NASAが研究中のレーザー推進システムは、ロケットのように燃料を爆発させて進むのではなく、基地から宇宙船にレーザーを照射、宇宙船側の巨大な受光アンテナにレーザーがぶつかると表面の金属板が蒸発、強力なガスを後方に噴射する。レーザー推進は地球側からレーザーを供給するため、宇宙船に大量の燃料を積む必要がない。連続して加速し続けることが可能なので、理論上、火星まで3日で着くという。

もちろん強力な加速で乗組員が潰れないようにする工夫が必要だが、これほど短期間なら放射線の被害は無視できる。

 

さらに酸素の問題も解決しつつある。米航空宇宙局(=NASA)は無人火星探査車両に搭載したガス変換器『MOXIE』を作動させ、火星の大気中に含まれる二酸化炭素から酸素を合成することに成功した。

二酸化炭素から炭素を分離できれば、酸素が残る。MOXIEは1時間あたり最大10グラムの酸素を合成可能で、これは大人1人の約20分間の呼吸に必要な酸素量と等しい。

[PHOTO]gettyimages

他の星に住むことは不可能ではなくなるはずだ。イーロン・マスクの言うように、私たちは多惑星に住むマルチプラネットな生命になるのか、それとも地球に住む続け、いずれは滅びるのか、そんな壮大な問いかけがこれからは現実の社会テーマになるかもしれない。

参考:
「火星大接近 2003 (解説 新しい火星像)」(平塚市博物館)https://hirahaku.jp/hakubutsukan_archive/tenmon/00000025/72.html
https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20200924_01/
「金星現象論: 金星の温度場」(地球流体電脳倶楽部)
https://www.gfd-dennou.org/library/riron/venus/temp/pub/temp.pdf

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