「ひきこもっていてもラクに生きる」公的支援の届きにくい「ひきこもり」問題への”意外すぎる対策”
内閣府は2018年に40~64歳までの中高年層を対象にしたひきこもりの調査を実施し、中高年のひきこもりは推計61万人を超え、15~39歳の若年層ひきこもりの54万人よりも多いと発表した。80代の親と50代のひきこもり状態の子どもが同居しながら孤立や経済的困窮を深める「八〇五〇問題」が顕在化してきた。
一方で、2020年の文科省「問題行動・不登校調査」によると不登校者は18万人強と、2011年と比べると1.6倍で過去最高になっており(小学生に至っては2.51倍)、子どもや若年層でも減る気配を見せない。
人口減少・労働力不足という経済的な観点からひきこもりを問題視する動きもあるが、それとは逆に、就学や就労を目標としない生き方や支援を旗印に掲げる動きもある。『ひきこもっていても元気に生きる』(新日本出版社)の筆頭編著者である高井逸史・大阪経済大学人間科学部教授に、後者の観点から捉えた場合のひきこもりに関する課題を訊いた。
なぜゴール設定を「元気でいればいい」としたのか
――ひきこもりについてゴール設定を「就学や就労といった社会復帰を目的とせず、ひきこもっていても元気でいればいい」に置いたのはなぜですか。
高井 ひとつには、長いあいだ国はひきこもりの定義を「15~39歳」としていましたが、そのときは「若いんだから学校行こう、働こう」となった。でも、40~59歳の調査をしてみたら、若い人以上にいることがわかった。
それなら、もうええやんかと。八〇五〇の現実を考えた場合、これから働く先を見つけることよりも、とにかくひきこもり当事者もその家族も「元気でいれば十分じゃないか」と。そう本人たちも周囲も捉えることでラクになろうということです。

もうひとつは、若いひきこもりの方に関しても、そもそも何か理由があってつらくて学校や会社に行かなくなったわけですから、それを無理に社会復帰させようとすること自体がキツイわけです。
就労や就学をゴールに置くから「学校行ってないからダメ」「仕事についてないなんてクズ同然だ」みたいに本人も家族も思い込んで責めてしまう。だからそんなところからは降りて「別にそうじゃなくたっていい」と自分自身を受け入れて、生きていること自体を肯定的に捉える、本人も家族も「生きててよかったな」と尊厳を復活する。これが大事だろうと。
――たとえ外に出られなくても、本人と家族のしんどさが少しでも解消されればそれでいい?
高井 ひきこもりに対してマイナスに思うのをやめて、プラスに考えてほしいんです。楽しくひきこもってみないか、と。もちろん実際にはそんな簡単にはいきませんけれども、私たちが関わっている方でも「これでもええんや」と思えるようになると表情が変わっていきます。