2021.07.06
# 学校・教育

「ひきこもっていてもラクに生きる」公的支援の届きにくい「ひきこもり」問題への”意外すぎる対策”

飯田 一史 プロフィール

スティグマなく受け入れることで皆がラクになれる

――ひきこもり経験者がいざ前向きになったときに壁になることは何でしょうか。

高井 就労ですね。先ほど言った社会通念の問題は当事者だけでなく雇用者側にも存在します。ですから履歴書に「ひきこもっていた」とはなかなか書けなくて、「親の介護をしていた」とウソを書いたりする。

これだけダイバーシティ(多様性)と謳われているのに実際にはキャリアの空白期間がある人、人間関係づくりや連絡・相談が苦手な人のことはまだまだ認められていないわけです。

企業の雇い主にまでは支援団体なども介入しづらいのですが、できればなんとか理解のある雇い主を見つけて、カミングアウトした上で短時間勤務から始めるとか、体調が悪いときは早退させてもらうといった配慮をしてもらうのが望ましいですね。

 

――当事者以外の、社会の側の問題は?

高井 当事者や家族がなかなか外と接点を持ちづらく、外に出にくくなるのは先ほども言ったように「こうでないといけない」という過度な規範意識や「いま外に出るとこんな風に見られてしまう」という後ろめたさにあります。そういう意味ではメディアと地域の人の視線も変わる必要があります。

メディアはとかく事件や犯罪とひきこもりを結びつけたがりますが、常識的に考えてひきこもりはそうでない人よりも犯罪率は低いんです。そもそもなかなか外に出ないわけですし、気の小さい方が多いですからね。

マイナスのイメージとセットでひきこもりをクローズアップされると、よけいに生きづらくなってしまう。そこは配慮してほしいところです。

また、地域の人も「あそこの息子さん、家にいてるみたいだけどどうしてるんかな」とか詮索しないでほしい。そういう奇異の目線がご家族に「恥ずかしい」という気持ちを抱かせますし、当事者も同世代からの目線と同じかそれ以上に小さい頃からの自分を知っているご近所さんの目を気にしています。

[PHOTO]iStock

しんどかったら家にいるのは当然だし、必ず外に出て学校や仕事に行かないといけないわけでもない。誰でもそうなる可能性がある当たり前のことであって、ひきこもっていても本人と家族が前向きに生きていければそれでええやんかということを新しい常識にしていく、ラクに生きられるようにみんなで社会通念を変えていくことが大事だと思います。

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