金よお前もか!
もちろん、ドルという通貨に対する「信用」も絶対的なものではなく、3月13日公開の「最強通貨・ドル、じつは間もなく『紙くず』になるかもしれないワケ…!」のようなことが起こる可能性は常にある。「米ドルの方が(「信用」に関して)仮想通貨よりはるかにまし」と言うだけのことなのだ。
そのため、米ドルの価値が「事実上の金本位制」によって支えられていた時期もあった。その「金によるドルの信用の補完が終わったのが1971年のニクソンショック(金ドル交換停止)」である。
その後、米国がいったいどの程度の金を(本当に)保有しているのか不明であることは、4月20日公開の「『ドルが紙くずになるかもしれない』時代に考えるべき、これからの金の価値」で述べた。
しかし、それ以外に「我々が確実な現物だと考えている『金』がマネー化している」現実もある。
人類が古代から採掘した金の総量は、15万トンから20万トン程度、オリンピックプール3杯から4杯ほどしかないとされる。
こんなに希少な金属(貴金属)なのに、なぜ世の中で普遍的に流通しているのかという疑問が当然浮かぶ。現在、金歯、結婚指輪を始めとして相当な量の金の現物が「個人で保有」されているはずである。また、ツタンカーメンの黄金のマスクなどの古代遺物もそのまま残っている。さらに各国中央銀行も大量に保管している。その残りが、世界市場で取引されるわけだ。
このような現物に対して、「ロンドン地金市場」はその「地金」という名前にも関わらず、実物の金地金の取引は一部だけで、ほとんどは帳簿上で取引されている。これが一般的にペーパー・ゴールドと呼ばれるものだ。
このペーパー・ゴールドは、実のところそのごく一部しか金の実物の裏づけが無い。銀行が預金のすべてを手元に置くのではなく、大部分を貸付けなどに回して「信用の創造」を行うのと同じ仕組みである。
要するに、どのような優良な銀行でも、取り付け騒ぎが起こって一斉に預金引き出しが行われればすぐに破たんするのと同じように、ペーパー・ゴールドも保有者が一斉に地金に交換すれば破綻するということだ。
また、我々の身近な「純金積み立て」の金の保管方法には、「混蔵寄託(特定保管)」と「消費寄託」がある。
前者は、いわゆる貸金庫方式である。「建前上」本人名義の金を「分別勘定」で預かっていることになっているが、それが本当かどうかを確認するのは簡単ではない。
「消費寄託」は、要するに銀行預金と同じで、業者の勘定として運用されるので、業者に万が一のことがあれば戻ってこない可能性が高い。