トラウマ・氷河期世代vs.雪解け・アベノミクス世代
図表2に示された世代別特徴を考えてみよう。20代を中心としたアベノミクス世代は、アベノミクス以降に資産運用に入った世代で、その間の運用利回りは5%以上と高い水準にある。さらに運用でマイナスになったトラウマをほとんど経験していない稀な世代でNISAやiDeCo等の資産運用サポートが揃った環境にある。
30代を中心とした雪解け世代は、バブル崩壊や金融危機が生じたあとに資産運用を始めた世代で、雇用環境も改善したなかで育っている。リーマンショック前後での損失のトラウマはあるものの、その後の世界的な改善もあり、トラウマ度合いは低くNISAやiDeCo等、制度面でもサポートが始まった時期に相応している。
一方、40代、氷河期世代はバブル崩壊後に長年運用面で損失のトラウマを負ったのに加え、就職氷河期に該当するため、非正規社員も多く正社員になっている割合が低く、二重のハンディを負った世代である。
同様に、50代のトラウマ世代は資産運用を始めて間もない時期から一貫して損失のトラウマに直撃された世代であり、2/3以上の時期が運用でマイナス状況になっていた。
以上のトラウママップから、20代アベノミクス世代・30代雪解け世代の間と、40代氷河期世代・50代トラウマ世代との間に大きなギャップ、「運用トラウマの崖」が存在する。
また、長期投資においては、いつ投資を開始しても一定のプラスのリターンをもたらし、長期になればなるほど利回り水準が安定し長期投資のメリットが示される。ただし、トラウマ時期によっては、実際に長期投資を完遂するのは容易でない。
一方、すでにトラウマをほとんど経験していない新たな若者世代が既に存在したことで、日本の現預金の山が部分的ではあるものの動く兆しが生じている。こうした若者世代が日本の資産運用のカルチャーを一変させる可能性をもつ。