韓国へのヘイトのフタを開けたのは、あの歴史的瞬間だった

この国を覆う憎悪と嘲笑の濁流の正体3
青木 理, 安田 浩一 プロフィール

嘲笑や罵声、なんでもありのバックラッシュ

安田 「モーニングショー」が幸いだったのは、青木さんがコメンテーターだったことなんだけど、「ゴゴスマ」ではコメンテーターのひとりが中部大学教授の武田邦彦だった。私が“ヘイト番組”だと言い続けてきた「ニュース女子」の司会者であり、最近では大村愛知県知事のリコール運動でも“活躍”しました。その武田は日本人女性が暴行される映像が出た後、コメンテーターとしてこういうふうに言ったんですよ。

「それは日本男子も韓国女性が入ってきたら暴行せにゃいかないからね」

安田浩一氏 撮影/西崎進也

青木 さすがにあの発言で彼は「ゴゴスマ」からも姿を消したでしょう。

安田 これはひどい発言で、批判する人がいたからさすがに「ゴゴスマ」も、生放送でもあったし、後で謝罪もしたけれど、ただ、「これは日本人男性も韓国人女性にやり返さなあかん」みたいな物言いが、在特会から発せられたわけでも世間知らずの無名ネトウヨが言ったわけでもなく、まがりなりにも大学の教員である武田が、しかもテレビに出ることのできる立場である人間が、生放送で発言したわけです。そうした人間をテレビに出しているのです。

僕が怖いなと思うのはこういうことなんです。いまワイドショーはひどいですよね。とくに韓国、朝鮮半島に関しては、青木さんが歴史的に辿ってくれたように、何を言っても構わないという雰囲気ができてしまった。

僕も自戒を込めて言えば、北朝鮮に絡めた問題なんて、僕が週刊誌にいたころは、これは裏取りがいらないし、訴訟リスクはゼロに等しく、ある意味ガセネタを書いてもやりたい放題だった。そういう記事を作っていた業界に籍を置いてきた以上、いまとなっては自分も煽っていた一人だったような気もする。だから、いつも自分のことも批判的に振り返らなければいけないと思うんですけれど。

青木 自戒が必要だというのは僕も同感です。だから北朝鮮をめぐるメディア状況を別の角度から振り返れば、日朝首脳会談以前のメディア界には北朝鮮への直接的批判がはばかられるような雰囲気もありました。とくに朝鮮総聯(在日本朝鮮人総聯合会)が相当な力を持っていて、在日コリアンの人権擁護などに一定の役割を果たしてきたのは事実にせよ、多くのメディアも朝鮮総聯に気圧されて報道も自制気味な面が間違いなくあった

つまり日朝首脳会談と拉致問題はその蓋を取り払うきっかけにもなったわけですが、今度はバックラッシュがあまりに強烈すぎて、一気に「なんでもあり」という極端な状況に染まってしまった。真っ当な批判や分析ではなく、嘲笑や罵声を浴びせて差別心を煽るような報道までが蔓延ってしまったんです。

次回は『自民党が決定的に変質した光景』です。明日更新!
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まえがき 切り捨ての時代を招いたもの
第一章    対韓感情悪化の源流とそれをもたらした日本社会の構造的変化
第二章    友好から対立へ 日韓それぞれの事情
第三章    恫喝と狡猾の政治が生む嫌な空気
第四章    社会を蝕む憎悪の病理 ヘイトクライムを生む確信犯的無責任と無知
あとがき 矛盾から逃げてはいけない

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