犯罪スレスレの手口
筆者はもう何年も前から経験していましたが、最近、小規模企業のM&Aが増えており、それに伴いトラブルも増加しているということを前回の記事〈個人投資家が「M&A」で大失敗するケースが増加中…その「実例」を一挙公開〉でお伝えしました。
そうしたトラブルは企業経営の知識がほとんどないのに会社を買収して社長になってみたいと安易に考えた結果、ある意味当然落ちるべくして落とし穴にはまるものや、犯罪スレスレの手口で買い手を騙す売り手に引っかかってしまった例もあります。
前編で触れた「古典的な手口」とは、売り手の会社が自分で考えつくのか、入れ知恵をされるのかはわかりませんが、「在庫押し込みによる売上のかさ上げ」という方法です。

エネルギー業界のX社のCVC(事業会社が事業拡大目的で余裕資金を使って行うM&A)が、製造業のY社をM&A仲介会社を通じて10億円かけて買収した例がまさにそうしたケースでした。
順を追って説明しましょう。
X社はM&A仲介会社に適当な買収先がないか打診しました。そこで紹介されたのがY社で、「独自の技術もあり収益も安定的に伸びている」というのが仲介会社の売り文句でした。
業績から見ても10億という金額は妥当と判断、買収は成立しました。
ところが、買収後、異変が起きます。売り上げが過去に比べて落ちているのです。原因を調べたところ、メインで取引していたZ社からの注文が全く入っていないことが判明します。