父とは何か、普通とは何か? ミリオンセラー作家が描いた「子ども時代に見た世界」

「お父さんは、ずっと絵を描いている人でした。ご飯を食べるときも、おばあちゃん家に行ってお墓参りするときも……。何かの資料用に、スーパーのレジ打ちの様子を描いていたら、警備員を呼ばれてどこかに連れて行かれたこともありました(笑)」

『大家さんと僕』シリーズが累計120万部を突破し、第22回手塚治虫文化賞短編賞を受賞した矢部太郎さん。父で絵本作家のやべみつのりさんを描いた最新作『ぼくのお父さん』は発売前重版がかかり、発売から1ヵ月経った今も爆発的に売れている。

どんなお父さんだったのか、なぜお父さんを描いたのか、お父さんを描くことで何が見えてきたのだろうか――。

 

変わっているお父さん

友達のお父さんとの違いを感じ始めたのは、5歳ごろだった。周りの家庭とは異なり、みつのりさんが太郎さんの保育園の送り迎えを担当することも多かった。『ドラえもん』などのアニメを見ていても、違和感を感じるようになったという。お父さんが変わっている。何かが違う。そのことは嫌ではなかったのか。

「よく一緒に遊んでくれたことは嬉しかったんですけど、サラリーマンだったらもっとお金持ちだったんじゃないかなとか、欲しいものを買ってくれないなとか、買ってほしいとお願いしたら別のものを作ってくれたりとか、そういうのはちょっと嫌でした(笑)」

みつのりさんが誕生日プレゼントをくれたと思ったら手作りのびっくり箱だった……というシーンも本書では描かれている。

「当時は、手作りのありがたみよりも、お願いしたものを欲しいという思いが強かったですね。友達がみんなテレビゲームを持っている中、うちだけ手作りかあ、って」

関連記事