「子どもをサッカーで伸ばしたい、強いサッカーチームに入れたら」と考えたとき、どのような視点でチームを選ぶのか。「強いチーム」とは一体何か。ジャーナリストの島沢優子さんは、まさに理想のサッカークラブに出会ったという。スポーツや教育の現場を多く取材してきた島沢さんが「理想的」と驚愕したその理由とは――。

Jリーグ下部チームを撃破した「町クラブ」
横浜市港北区を拠点に活動するNPO法人大豆戸(まめど)フットボールクラブ(以下、大豆戸FC)のホームページをのぞいたとき、少しだけ拍子抜けしたのを覚えている。
大豆戸FCは、2019年度の神奈川県チャンピオンシップU-12(兼関東少年サッカー大会神奈川県予選)で、横浜F・マリノスプライマリーなどJ下部2チームを撃破して初優勝。その後の関東大会でも3位と大健闘した。
それなのに、HPには優勝カップも集合写真も何も出てこない。チーム紹介にさえ触れられていない。他年度の日本一クラブはどこもトップページで誇らしげに報じているというのに。
代表理事の末本亮太さん(43)は「勝つことはひとつの目標だけど、クラブを運営する目的ではありませんから」とにこやかに話す。
ええ~っ!でも神奈川ナンバーワンなんて宣伝になるじゃないの?と言いつつサイトの「チーム紹介」をポチっとするが、ここにも県優勝云々の大会実績は出てこない。それより、紹介文にある指導コンセプトの「皆さんは、お子様にどんな大人になっていてほしいですか?」の一行にドキッとさせられる。
「自分のことは自分でできる、自分で考えて行動できる、自分で納得解を出して決断できる。そうなってほしいと願っていないでしょうか。では、そのためにこの年代で何が必要とされるか? 答えのない時代を生きる子どもたちの根っこを育てます」のフレーズにも胸を衝かれた。
わが家の子どもたちが小学生だったなら、絶対入れたわ――末本さんにそう告げたら「ごめんなさい」と頭を下げられた。全学年が数人ずつ入団待ちしているという。さすがハマのパパとママはお目が高い。