広がるスポーツの地域格差「アンフェアな甲子園」が証明するモノ

今こそ知りたい! 「方法論」より「目的論」(6)
問題を解決しようとがんばっているけれど、自分が少しかわいいゆえに、その場しのぎの決断を繰り返す――そうして本来の「目的」を見失い、「方法論」ばかりに目を向けるこの国のリーダーたち。一方、一流アスリートたちは、「なぜ?」「どうして?」を繰り返し掘り下げて、正しい戦略のもとに正しい努力を積み上げて成功を収めている。
スポーツアパレル「アンダーアーマー」の日本総代理店・株式会社ドーム代表取締役CEO・安田秀一著『「方法論」より「目的論」「それって意味ありますか?」からはじめよう』より注目の章を短期連載!

アンフェアな甲子園

この「大都市と地方の格差」という現象がもっともわかりやすいかたちで、そしてもっとも残酷なかたちで表れているのが、僕が関わっている「スポーツ」という世界だからです。

このあたりをご理解していただくには、日本人が愛してやまない国民的なスポーツ大会である「甲子園の高校野球」がわかりやすいかもしれません。

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ご存じのように、甲子園球場では「高校野球日本一」を決める大会が行われます。北海道から沖縄まで47都道府県の高校野球部が地区予選に出場し、その頂点に立った代表校が甲子園のグラウンドに集って、トーナメントが開催されます。この夢の舞台を目指して努力と練習を重ねてきた高校球児たちが織りなす熱戦とドラマに多くの人が胸を打たれるのは、みなさんもご承知の通りです。

しかし、この甲子園の高校野球というスポーツ大会、運営の実態を見れば、とても「フェア」と言える大会運営ではありません。本来は、同じ条件をできるだけ揃えて競い合うはずのスポーツに、「大都市と地方の格差」がこれ以上ないほど露骨に反映されてしまうからです。

たとえば、鳥取県の人口は約55万人。一方、神奈川県の人口は鳥取県の約17倍の約924万人です。

さらにいえば鳥取県の高校生の数は約1.4万人、神奈川県の高校生は約20万人です。この巨大な格差を前提に対戦が組まれて「高校野球の日本一を決める」という目的が達成されるか、とても疑わしいです。

また、神奈川県や大阪府などの優勝常連校は、自分たちの学校が所在する都道府県以外から優秀な中学生を大量にリクルートします。つまり、鳥取県など人口の少ない地域で活躍する優秀な中学生選手は強豪校を持つ他県に流出する、ということも常態化しています。そんな状況で「都道府県の対抗戦」という意味がどこにあるのか……。そもそも都道府県の区分けの格差が巨大なうえ、そんな無秩序な運用をして教育的意義を謳えるのか、はなはだ疑問と言わざるを得ないと思います。

甲子園大会のいびつさは選挙における「一票の格差」と同じです。でも、この一票の格差という民主主義の根本問題は、日本においてはなぜかあまり議論になりません。

地方創生も同じです。旗は掲げても、地域格差は広がるばかりです。僕は、こうした甲子園大会などのスポーツが、都道府県制度の本質的課題を炙り出し、地域格差問題の議論が本格的に高まってくることを期待しています。

つまり、人口差が約17倍もある県と県を同じ括りとして行政を行う必要があるか?という疑問です。鳥取県の人口は55万人ですが、僕の生まれた東京都大田区の人口は73万人です。鳥取県にはさらに4つの市があり、それぞれ市長や議会が存在します。

すなわち、甲子園大会における地域格差の議論が白熱することで、「そもそも都道府県の人口って、めっちゃ偏ってないか?」という本質論に近づくのでは、という期待が持てるのです。

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