残業をしたくてもできない世の中に
「働き方改革」が進めば、こんな未来が待っている――? 青年マンガ誌「イブニング」にて連載中の『帰らないおじさん』(西村マリコ)が話題を集めている。
政府は2018年、超少子高齢化による労働人口減少対策に踏み切った。生産性の向上、多様な就労形態が謳われ、それまでの昭和的「モーレツ」な働き方を是正し、新時代の就労の形を提示したのである。
「定時退社」「脱・長時間労働」…なんと魅力的な言葉だろう。
だが、働き方改革が進んだ令和202X年を描く本作は、こうした状況で困難な立場に置かれる人たちが出てくると予想している。
これまで日本の家庭は「父親の残業」ありきで考えられていた。生活費、住宅ローン、子供の養育費…家庭内生活サイクルまでもが「残業」に支配されていたのである。
“父親がいなくても円滑に回る”家庭サイクルが強く根付いているため、役割の無い者の早い帰宅に妻はイラつき、成長した子供は口をきいてくれず、収入減少で肩身は狭い…。会社に居残ろうとしたところで、帰らない上司は部下たちからすこぶる評判が悪いだろう。
到来したこの新時代は、行くあても帰る場所もない人々を生み出す可能性があるのだ――。長時間労働から開放され自由を手に入れたサラリーマンたちだったが、家にも会社にも居場所がない。こうした「帰らないおじさん」たちが、持て余した自由を謳歌するために、試行錯誤していく、という物語だ。
担当編集者はこう語る。
「私自身も就職氷河期時代にリクルート活動をしていたアラフィフおじさん。家族もいて家庭も大切ではありますが、今もっとも欲しいものは圧倒的に自分一人の自由時間です。この話に出てくるおじさんたちは、『働き方改革』により、残業が減って給料も減ってしまったけれども、自由時間がある。もし1日3時間の自由時間があったら、あなたは何をしますか? 令和の『5時から男』たちにご注目ください!」
シュールなコメディマンガではあるが、今から自身の働き方や趣味の有無、家庭でのあり方を見直すきっかけになるかもしれない。