日本中、いや日米中で誰もが応援している、といっても過言ではない大谷翔平選手。今までにまったくない、日本から生まれた、世界で光輝く存在となっている。LUX=光輝くもの、とは「ラグジュアリー」の語源。まさに大谷選手は新しい時代を象徴するラグジュアリーそのものといえるのではないだろうか。

その「大谷選手のラグジュアリー」を、日本発のラグジュアリーに関してのアカデミックな研究テーマJapan‘sAuthentic Luxury=JAXURYによる「10の視点」を通して、実際に大谷選手のスタイリングを複数回され、「リアル大谷選手」と接しているメンズファッションスタイリストの第一人者、森岡弘さんに語っていただいた。

「(2018年撮影当時)食事はどうしているの? 行きつけの店は出来た? と聞いたら、ほとんど球場にある選手用の食堂です、と言っていました。思い立ったらすぐ練習に行けるように住まいも球場の近くにしてもらったようです。遊びに行ったりもしないようで、暇があれば練習するか本を読んでいる、と言っていました。
そうそう、スーツは好き、って言っていましたね。誰と会っても失礼にならないし、コーディネイトもしやすいし、と」(森岡さん・以下同)
すべての大前提に「楽しい」がある
JAXURY1.クラフトマンシップ 作り手やサービスの提供者が「心から良いと思うもの」を嘘いつわりなく追及し、そうして創造されたものやサービスが彼らの信念を世界に具現化している

「会うと、本当に大きいんです。びっくりしますよ。滅多にこんなことは感じません。職業柄、2メートルちかいモデルやアスリートにはしょっちゅう会っているし、大きい、と殊更に感じることはまずありません。まだ日本にいたころにも(大谷選手に)会っていますが、渡米後に撮影で会ったときは、本当に大きく感じた。
ただ体を大きくしているのではなく、全てを賢く、間違いなく、食事や身体のケアも含めて、管理していると思います。それが迫力となって『ほんとうに、大きい』と感じさせるのではないでしょうか。パフォーマンスを上げるためにどうするかを、それこそ24時間、寝ているときでさえ考えているのではないかと思わせます。しかも、そこには悲壮感はない。あくまでもっと上手くなるための時間を含めて野球を『楽しんでいる』のでしょう。
あんなに楽しかった野球が『仕事』になった途端に辛くなった……。プロ野球選手はこう感じることが、とても多いと聞きます。打てなかったらどうしよう、契約を切られるんじゃないか、この先どうなるのか……。しかし、大谷選手は違う気がします。成功に拘らず、失敗することを怖がらず、『挑戦すること』に集中し、『楽しむ』のもっと上、『夢中』な状態が少年の頃からずっと続いているのではないでしょうか。
『楽しむ』がすべてを凌駕しているんです。挫折というものは諦めたときにやってくる。だから彼には挫折はない。自分の可能性を信じて前へ突き進んでいる。彼がしていることは、野球界のみならず、たくさんの扉を開け、とても多くのことを劇的に変え続けているのだと思います」
高校時代から磨き続ける体力・技術・心の「センス」
JAXURY2.感性 かかわるすべての人が、本質的な価値を感じとる感性を持ち合わせていることで、クラフトマンシップにより具現化された信念が体感、理解され、愛されている。
JAXURY3.信頼 提供する側と受け取る側とが互いのクラフトマンシップと感性を信頼し合っており、その双方向の信頼が存在することで、ものやサービスに宿る信念が人から人へ継承されていく
「もちろん、とても高いレベルの話だとは思いますが……。最終的な差はセンス。意外かもしれませんが、これは多くの一流と言われる選手が口にすることなんです。努力することは当然の世界。結局、最後はセンスの差なんだ、とね。もともとの身体能力に光るものを持っていたのは間違いありません。が、彼の今の土台を磨き光り輝かせたのは、高校時代のあの81マスをいまでも実行できているからだと思います。
ゴミを拾うことで運を拾う、などはともかく、あれだけたくさんの本質的なことを、どうして高校生で思い至り、いまもなお継続できるのか、と思いました。特別なことではなく、当たり前のことを当たり前に出来る。そこにも彼の気付きと実行力という、誰もが知っているが簡単には実行できないことを自然体で実行できる体力、技術だけではなく、心持ちにいたってもセンスが現れているのではないでしょうか」

――有名なあの81マスのなかの「人間性」のマスのところに、「感性」「信頼される人間」「愛される人間」が「感謝」「思いやり」「礼儀」とともにあります。そこには「計画性」「継続力」も。かつて日本のプロ野球での大谷選手の球団監督、栗山英樹氏は「能力ではなくて、ああいうモノの考え方をできる選手とは二度と会えないと思う」と語っています。
「書いたことを実現し続けていますよね。彼はずっとそのマス目どおりの生き方を続けているんでしょうね、楽しみながら。しかも技術面であるバッティングやピッチング、走り方をどんどん研究進化させているように、マス目の中身もどんどん進化しているのでしょう」