ドイツを襲った大洪水…それでも「CO2削減」しか頭にない政治家の無責任

本来すべきことは国土強靭化ではないか

公営第2テレビ夜7時のニュース

7月半ば、ドイツの西部地域が未曾有の洪水に襲われた。土砂崩れで集落が丸ごと消えてしまったり、川のようになった道路で、恐ろしいばかりの濁流がトラックや家などを呑み込んで押し流していったりする映像は衝撃的だった。170名近い命が失われたのだから、尋常ではない。しかも、まだ多くの行方不明者もいる。

水が引いたあとは、泥に埋もれた半壊の家の前で呆然とする人たちと、少しでも復旧に力を貸そうと集まってきた多くのボランティアの人たちにスポットが当てられた。それを見ながら、ショックは国民の心に深く刻まれた。家屋だけでなく、広域にわたって電気、水道、ガス、通信網、道路、鉄道、橋が破壊された。被害総額は天文学的な数字に上り、復旧には数年はかかるだろうと言われる。

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さて、今回、特に公営放送が、適切な情報を適時報道するという本来の役目を十分に果たせていたかというと、ちょっと違うような気がする。報道は、豪雨が続いて川の水位が上がり始めていた頃、その後、氾濫で多くの土地が水に浸った時、さらに、被害のあまりの拡大に国民が言葉を失ってからと、中身が刻々と変化した。公営第2テレビの夜7時のニュースを振り返ってみたい。

7月12日は、前夜に行われたサッカーのヨーロッパ選手権の結果がトップニュースで、イタリア人が国を挙げて大喜びする様子がニュース枠のほぼ3分の1を占めた。そのあとは北米の猛暑。56度を記録したカリフォルニア州では、知事が「猛暑と山火事の原因は、人間が原因の気候変動である」と言い切った。ドイツでの増水のニュースはなく、天気予報が豪雨を予報していただけだった。

 

13日のトップニュースはワクチン接種をもっと進めなければならないという話。目下のところ、ドイツの感染率は非常に低いレベルで抑えられているが、「これから急増するかもしれない」とナレーター。さらにメルケル首相が登場し、「あなたの周りにいる大切な愛する人たちのため」に是非とも接種を受けるよう強力に推奨。

そしてこの日、3番目のテーマとして出てきたのが各地の豪雨。特にドイツ西部を流れるライン川の水位が上がっており、ケルン周辺に洪水警報が出ていた。

14日のトップニュースは、EUの欧州委員会が提出した気候に関する法案。欧州委員長のフォン・デア・ライエン氏(ドイツ人)は、EUを世界で最初のカーボンニュートラルの土地にしたい意向で、CO2削減目標達成のため、石油やガスの値上げ、また、2035年にガソリン、ディーゼル、ハイブリッドなどの新車登録を停止することを提案した。

それに対し、DIW(ドイツ経済研究所)の研究者が、「方向性は正しい。温暖化防止対策は加速されなければならない」とお墨付きのコメント。さらに同局の環境担当者が、この法案が通り、気候政策がうまくいけば、「次世代の人たちは綺麗な空気を吸え、近代的な生活が実現され、全ては良くなる。ユートピアだ」と称賛した。

ただ、彼によれば、「対策は20年遅い」。もっと早くにやっていれば異常気象は防げたのに、と言っているように聞こえた。

しかし、ちょうどこのころ、ドイツの南部と東部では、すでに豪雨のための甚大な被害が出始めていた。地域によっては、文字通り沈んでしまっている場所もあったのだが、そのニュースが、このユートピア発言の後とは、私には、どう考えても順序が逆だと思えた。

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