雄大な浅間山をバックに、約一反の畑で農作業を続ける若い二人の男子がいる。遠目にも爽やかな印象だ。早朝の軽井沢。ひんやりとした気持ちいい冷気と朝靄がたちこめている。まだ別荘もショッピングモールも眠っているこの時間に、ハーブ畑の収穫作業を黙々とする二人。地元の農民ではなさそうだ。いったい誰だ? なぜ軽井沢で農作業をやっているのだろう? 

 高校時代からの友人ふたりで農業を

 「ぼくは25歳でこの町に移住してきたレストランとショップの運営者で、彼は東京と軽井沢を行き来して二地域生活をしている友人です。」
 
そう語ったのは船倉裕作くんだ。で、なぜ農業を?
 
「ハーブ畑は地元の農家さんのものでぼくらは手伝いですが、その他でも地元の農家さんに教わりながら無農薬野菜を育てています。収穫した野菜は自分たちのレストランで提供したりオンライン販売したり、東京にも場所を確保できたら産直販売したいと思っているんです」

トウモロコシを植える船倉さんと仲間たち 写真提供/船倉裕作
 

もう一人の岡澤光央くんと共に現在29歳、横浜生まれ。かつて高校時代は毎日どちらかの家に泊まって学校にいくほど仲がよかった。卒業後二人はそれぞれの大学に進学したが、船倉くんは並行して役者の世界へ。誰もが知る大作映画にも出演していた。岡澤くんは東北の震災後にボランティアを経験したり南米をバックパック旅行をしたりした後、大手IT企業に就職。いまも都内でバリバリ働いている。
 
二人はいまここ軽井沢でチームを組み「追分男子」を名乗る。メインの仕事は星野リゾートの人気スポット「ハルニレテラス」にある店舗「モリアソビ」で、アウトドアリビングの雑貨屋とレストラン、夜はバーも運営する。船倉くんは軽井沢に住み複業(農業などとのパラレルワーク)で寝る間もないほど忙しくい。岡澤くんは港区の一流企業とのダブルワーク。軽井沢が観光客で溢れるハイシーズンなどは心身ともにクタクタだ。けれど二人の表情はあくまでも爽やかで、やり甲斐に満ちている。誰に頼まれたわけでもなく一心に汗を流す。その理由は何なのか。いったい二人はこの地で何をやりたいのか――。
 
まずはふたりの「働き方」の背景から聞いていこう。