こうした風潮はアメリカでも問題になり、元米国大統領のバラク・オバマ氏は、
「一部の若者の間でときどき、『変化を起こすためには、他者に対してできる限り批判的であるべきだ』という風潮を感じる。SNSによって、それはさらに加速している。だが、もう充分だ」
と、2019年に批判している。それから約2年、日本にもキャンセル・カルチャーが広がってきている、と言えるだろう。

「完全に無罪な人」は存在しない
何度も繰り返すが、完全に無罪な人は存在しない。いじめ、マウンティング、セクハラ、パワハラ……当時は「冗談」と思って話したことが、思い起こせばハラスメントだったのではないか、と思わされることはよくある。
そして、もちろん他人のハラスメントを見つけたときに、健全な範囲で批判があることも肝要だ。東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会で、前会長の森喜朗さんが女性理事について「みんなわきまえておられる」と、男性に比べて控えめでいることを褒めた発言は、国内中の批判を巻き起こし、当人の辞任につながった。
このまま「わきまえた女性」で固められた組織でオリ・パラ運営がなされていたら、五輪憲章の「男女平等の原則の完全実施を目指す」にもとる事態となっていたわけだ。