気づかぬうちに洗脳されるダイエット広告

たとえば、友達が『聞くだけで痩せるカセットテープ』を持っていたときのことだ。興味津々に話を聞いていると、それはある雑誌広告を見て取り寄せた無料サンプルのテープで、必要ならダビングしてくれるという。完全に信じていたわけではないが、「もしかしたらやせられるのかも……」という淡い期待と、どういう仕組みなのかが気になり、家にあった空のカセットテープを友達に渡し、ダビングしてもらった。

家に持ち帰り、家族に聞こえないようイヤホンでこっそり聞いてみると、謎の博士とダイエットしたい女性が会話しているテープだった。「このテープには、脳に良い周波数が収録されているから聞くだけで痩せるんだ!」「え〜! すごーい!」とやたらポップに説明する内容だった。

 

しばらく聞いてみたが、体重に何の変化もなかったことについては「サンプルだからかな? 有料版のカセットテープなら痩せるかも」「ダビングされると効果が無くなってしまうのかも」と自分なりに解釈した。

有料版のカセットテープを購入して試してみたい気持ちもあったが、小学生の自分には手の出せない金額だったし、通販するときは親に頼まなければいけなかったので、私がそれを実際に手にすることはなかった。今思えば、怪しいものに浪費しなくて良かったと心から思う

しかし、中学生になると、ドラッグストアで売っている1000円ほどのダイエットサプリの存在に気付き、こっそり買って飲むようになっていた。あるとき道徳の授業で教師に「このクラスの中で、ダイエットサプリを買ったことある人いたら手をあげて」と聞かれた時は、ドキッとした。

ダイエットはどんどん低年齢化し、小中学生でダイエットサプリを飲んでいる子もいるという。photo/iStock

私は人目を気にして手をあげなかったが、誰も手をあげないことを確認した教師が、「よかった、買ってる人がいなくて。ああいうものは効果が無いし、危険な成分が入っている場合もあるから絶対買っちゃだめ、そもそも成長期の君たちにはダイエットは必要ない」と言ったので、さらにドキドキした。ダイエットサプリを飲んでいると言ったら怒られていたかもしれない。

そして確かに私が買ったサプリは効果が実感できなかったものの、「食べる前に飲むだけ!」「カロリーをなかったことに!」などと謳うダイエットサプリのCMは普通にテレビでもよくやっていたので、なんだか複雑な気持ちになったことを覚えている。

サプリだけで本当に肥満を解消できるなら、こんなにダイエット商品が世の中に溢れている訳はないという事実に今なら気付くことが出来るのに……。当時の私は「もしかしたら」という魔法を夢見ていのだ。

2020年4月になおさんがSNSにアップし19.7万いいねでバズッたダイエット広告を皮肉って真似たもの。なおさんは長年、ダイエット広告の問題を指摘してきた。