連盟、スポンサー、メディアの共犯関係
東京五輪開会式とほぼ同じ頃に、ノルウェーの女子ビーチハンドボールチームが、規定のビキニを履かず、短パンで欧州選手権の試合に臨んだとし、ハンドボール連盟から罰金を科されたというニュースが飛び込んできた。

へえ、ビーチハンドボールという種目もあるんだあ。ビーチバレーボールの間違いかな、いや、ビーチバレーボールだったらすでに女子選手はビキニ以外のボトムスを選べるはず。え、そもそも、なぜハンドボールでビキニ?――そんなことが頭をよぎった。
ハンドボールを実際にプレイしたことがある人なら想像できるかもしれない。ゴールを決めるため、ゴールを守るため、体を大きく使い、倒れこんだり、脚を広げる動きがたくさんある。ビーチハンドボールは経験がなくとも、サイドの幅10センチまでのビキニを穿かなければならない居心地の悪さは、想像に難くない。
今回の騒動を知り、ビーチハンドボールのユニフォームに関する規定を読んでみた。男子のボトムスは、膝頭から10cmの高さを保てばどんな長さでも構わないとなっているいっぽうで、女性のボトムスは「サイド幅は最大10センチまで」の他に、「脚の上部に向かって斜めにカットされたフィット感のあるビキニボトムスを着用すること」とビキニ以外の選択肢は、やはり明記されていなかった。
また興味深いことに、この規定には「男女のユニフォームは以下の基準に対応していなければならない」として、次の文章が続いている。
<オリンピック憲章によると、宗教的、政治的、人種的なメッセージを競技用ユニフォームに記載することは固く禁じられている>
オリンピック憲章第5章の「広告、デモンストレーション、プロパガンダ」に合致する内容だが、今回のビキニ騒動から、オリンピック憲章の根本原則に書かれた性差別を含むいかなる差別の禁止という観点は、国際ハンドボール連盟の規定からは抜け落ちている。
さらに、ビーチハンドボールの規定には、男女のユニフォームで、スポンサーやメーカーのロゴを入れるスペースを確保することや、ロゴを入れる場所に関しては詳細が明記されている。スポンサーのロゴの入る場所は、女性のユニフォームでは尻や胸あたり。これは、ビーチバレーボールの試合映像を分析した調査結果で、映像が集中していた部位とほぼ一致しているのだ。つまり今回のビキニ問題は、連盟、スポンサー、メディアの共犯関係によって起こったと言えなくもない。