「2035年ガソリン車廃止」急加速するEVシフトの“不都合すぎる真実”

EVの方が省エネだとは全く言えない
朝香 豊 プロフィール

ガソリン満タンは1分程度なのに

容易に、しかも豊富に入手でき、性質面でもリチウムに近い「ナトリウム」でリチウムを代替することも理論上は可能だが、ナトリウムの原子量はリチウムの3倍もあり、イオン体積でも2倍になることから、バッテリーがリチウムのものよりかなり重くなるのは避けられない。

EVの場合にはバッテリーの重量の問題は非常に大きい。バッテリーの重量が重くなるとエネルギーを無駄に使ってしまうため、航続距離を伸ばせないという問題が出てくる。そのため、ナトリウムバッテリーの採用は現実的ではないだろう。また、リチウムイオンバッテリーの爆発事故は現在でも珍しくないが、金属ナトリウムは金属リチウムと比べてさらに取り扱いが難しいことからしても、この選択肢も現実的ではないと見るべきだ。

充電時間の問題は、LFP電池にすることで解決のめどが立ち始めているとされるが、LFP電池でも400kmの走行距離を確保するのに高速充電で10分は必要とされている。ガソリン車が1分ほどでガソリンを満タンにして概ね600km以上の航続距離を得られることからすれば、利便性が大きく落ちることに変わりはない。しかも高速充電ではバッテリーの消耗が激しくなることも覚悟しなければならない。

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ガソリンを満タンにするよりもEVのバッテリーを満充電する方が遥かに時間がかかるとすれば、EVのバッテリーステーションの数はガソリンスタンドよりもずっと多くないと困ることになる。

しかも単位時間あたりで扱える車の数がガソリンスタンドよりも遥かに少ないことを考えると、EVバッテリーステーションの経営はなかなか成立しにくい。高額な電気料金をユーザーから徴収すればいいのかもしれないが、そうなると走行中のランニングコストまでガソリン車よりも高くなり、EVのメリットは完全に吹っ飛ぶことになる。

しかもガソリン車であればどの車も同じガソリンを入れるだけだが、EVの場合には車種ごとに搭載されているバッテリーが違うために、車種ごとに違う充電器が必要になるという面倒くさい話もある。バッテリーの劣化の程度などを計算して充電量を調整するようなことが必要であり、充電中に充電器とEVの間では情報のやり取りがなされている。ガソリンのように単純に扱うことはできないのだ。

この問題は将来的には規格の統一が進むなどして解決していくことも考えられないわけではないが、決め手となるバッテリーが定まらないうちはこの不便は避けようがない。

バッテリーの消耗を小さくするために単相交流100Vコンセントで普通充電を行うとすると、1時間でおよそ10km分しか充電できず、10時間充電しても100km分にとどまる。単相交流200Vコンセントを使えばこの2倍にはなるが、それでも10時間充電して200km分にとどまる。家の近所で使うことだけ考えればこれでも十分だろうが、長距離移動を想定するとガソリン車の利便性のほうがずっと大きいと言わざるをえないのである。

 

また、雪国では大雪が降って車内に長時間閉じ込められた挙げ句に、最終的には車を乗り捨てせざるをえなくなることがある。こうした場合には、救助が来るまで防寒のために電力を用いて寒さを凌ぐことは普通のことだ。そのため、乗り捨てした段階ではバッテリーに電気がなくなっているということも当然起こりうる。

こうした場合、乗り捨てられた車をどうやって動かすかが、大きな課題だ。ガソリン車であれば灯油タンクを大量に積んだトラックを運べば済む話だが、EVの場合にはそういうわけにはいかないからである。

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