ゲイであることを公言するライターの富岡すばるさんは以前、記事「ゲイが『女性のフリ』して出会い系をやったら『地獄』だった」の中で、「女性は得でいいな」と思っていたが、女性のフリをして出会い系をやる中で、その考えが覆されたことを綴り、大きな反響を呼んだ。
そして先日起きた、小田急線の無差別刺傷事件。ミソジニー(女性嫌悪)犯罪といわれるこの事件を受けて、富岡さんが改めて感じた問題とは。
※以下、富岡さんによる寄稿。

自分の中の「嫉妬」を認識できない男性たち

8月6日の夜、小田急線の車内で起こった無差別刺傷事件。その凄惨さと共に衝撃を与えたのが、逮捕された男の次の言葉である。

「6年ほど前から幸せそうな女性を見ると殺してやりたいと思うようになった」

特定の人ではなく、女性そのものに対する怨恨。ネット上でも多くの識者たちが、これを「ミソジニー(女性嫌悪)犯罪」や「女性へのヘイトクライム」、あるいは「フェミサイド(性別を理由に女性を標的とした憎悪犯罪)」であると指摘している。
その際、韓国における#MeToo運動のきっかけともなった「江南通り魔殺人事件」を一例に挙げる人も多く見られた。

江南通り魔殺人事件は、2016年にソウル江南駅近くの男女共用トイレで、当時23歳の女性がまったく面識のない男性に突然殺害された事件だ。逮捕された男が「女性を狙った」といった主旨の発言をしたことから、ミソジニー犯罪だと当時いわれた。

そもそも、なぜミソジニー犯罪は起こるのか。そのことを考えていたら、以前、自分が投稿した次のツイートが頭に浮かんだ。

嫉妬は女性がするものだという偏見が根底にあるせいか、自身の中にある嫉妬を嫉妬だと認識できずにいる男性って結構いるんじゃないかと思う。
認識できないが故にそれを歪んだ正義感や理不尽な怒りに変えて相手へぶつけてるんだろうな、という男性を結構見てきたので。上手に嫉妬することって大事
 

このツイートにはたくさんの共感のコメントが届き、2000以上の「いいね」がついた。

女は嫉妬深い」という言葉は、恐らくたいていの人が見たり聞いたりしたことがあるのではないだろか。僕も振り返ると、Twitterでそんなことを呟いている人を見たり、職場の男性上司や女性の知り合いから直接聞いたりした記憶がぽろぽろと出てくる。

嫉妬という単語がどちらも女偏を含む漢字から成り立つところにも表れているように、「女は嫉妬深い」という概念は空気のごとくそこら中に漂っている。まるで、「男の嫉妬」の存在を、社会の中で隠すように。