東京オリンピックサッカー男子は、準決勝で惜しくも敗退した。最後まであきらめず全力をつくした選手のひとりひとりに、心から敬意を表したい。ただ、スペイン戦、メキシコ戦で感じたのは「世界の強さ」でもあったのではないだろうか。ひとりひとりの「想い」「技術」ではない「何か」が大きく立ちはだかっているような印象。それは何なのか。
スポーツの現場や教育について長く取材してきたジャーナリストの島沢優子さんが、スペインでサッカー指導の現場にあたる日本人監督・高田純さんに話を聞いた。
田中碧選手の「世界は遠い」のコメント
東京2020サッカー男子3位決定戦は、日本がメキシコに1対3で敗れメダルを逃した。準決勝でスペインを相手に延長戦までもつれ込む戦いを演じていただけに、メキシコ戦の完敗後は「この差は何?」とSNSが荒れ模様に。そのなかで、ドイツリーグのフォルトゥナ・デュッセルドルフ所属のMF田中碧はスポーツ報知の取材に対し、「世界は遠い」とコメントした(スポーツ報知8月6日「日本男子メダル届かず…MF田中碧「サッカーを知らなすぎる」)。
「デュエル(球際や1対1で勝ること)だの戦うだのを、彼らは通り過ぎている。チーム一体となってどうやって動いて、勝つかに変わってきている」と話し、「彼らはサッカーを知っているけど、僕らは1対1をし続けている。そこが大きな差」と言い切っている。
スペイン戦後すぐにスペインで小学生年代を指導する日本人男性にインタビューした筆者は、上記の田中選手の言葉が、その男性の話とあまりに合致していたことに驚かされる。パソコン画面を何度も見直してしまった。
インタビューの相手は、バルセロナにあるUE CORNELLA U-11(11歳以下)第1監督の高田純さん(25)。スペイン在住8年目で、同地で取得した指導者ライセンスは最高位の一つ下であるLevel2だ。