習近平の自業自得で中国経済は「バブル崩壊」秒読み段階に

もうこの流れは止められない
朝香 豊 プロフィール

社会主義的統制を強化する理由

習近平は教育業界にも思い切ったメスを入れてきた。

小中学生向けの学習塾に対して週末や長期休暇期間中の授業を禁止し、非営利団体への転換を求めた。新規開業許可を停止し、上場による資金調達を禁止し、買収などによる外資企業の経営参画も認めない方針まで打ち出した。

これも米市場に上場している「TAL」「高途」「新東方教育科技」といった企業の株価を直撃した。

Gettyimages

TALの場合には2月16日に90.96ドルの最高値を付けていたが、7月26日には4.03ドルにまで価格が低落した。95%ほど株価が吹っ飛んだ計算になる。その後少し株価は戻したが、それでも8月10日段階では6ドル程度に留まっている。

さらに驚くべきことに、小学校での英語の授業とテストが禁じられ、外国人講師が排除される動きまで出てきた一方、習近平思想の教育を新たに導入するとしている。まずは上海で導入し、その後全国に広げる方針だと見られている。

ネット通販大手のピンドゥオドゥオの創業者も動画投稿のバイトダンスの創業者もともに、経営の第一線から退くことを発表した。当局に逆らっては自分の命もどうなるかわからないからだ。

異能の経営者が次々と企業から抜けて、共産党の幹部がその地位を占めるようになった時に、企業の革新性を維持することは難しいであろう。

習近平政権は社会の全面で社会主義的な統制を格段に強めながら、自由な経済をどんどんと破壊する動きに出ているのである。

習近平がこのような動きに出ている理由の一つは、敵対する江沢民派に打撃を加えるためであると見られている。

アリババ、テンセントに代表される中国のテック企業は江沢民時代に育ってきた。それゆえにこうした企業と江沢民派とのつながりは深い。党内の権力闘争で江沢民派を叩き潰すことは、習近平には優先度が高いのである。

 

もう一つの理由は、習近平が社会主義者であることだ。

社会主義者だからといって、習近平は決して弱者保護に熱心なわけではない。だが、設計思想により「正しい」社会を建設することは、中国を強国にするのに欠かせないと考えている。経済的な利益を求めて自由な経済活動を認めたことで、社会は退廃したと習近平は考えている。

関連記事