破綻を前提とした動きも
デフォルトが秒読みとなったことは、別の動きでも確認できる。恒大集団に向けられた債権回収の訴訟は各地で発生しているが、こうした訴訟はすべて広東省の広州市中級人民法院(地裁)で一括審理されることが決まったのである。
これは判決の出る順番によって確保できる債権の額に差が生じることをなくし、できるかぎり公正な返済を行うためと見られている。ある債権者には債権の100%近い金額が返ってくる一方、別の債権者には0%に近い状態になるというのは適切ではない。どの債権者も債権額に対して同じ割合で返ってくるようにしようということであり、もはやこれは破綻を前提とした動きと見るべきである。
こうした公平性を重んじたデフォルト処理を、中国政府は一般化させようとしている。

2020年11月に石炭大手の永城媒電集団のデフォルトが発生したが、この時、同社は一部の債権者に不利益を与えるために資産の一部を別会社へと差し替えていたことがバレてしまった。ここに中国政府は異例にも介入し、投資家の間で差がでることがないよう債権処理を進めさせた。これは今後増えるであろうデフォルトに対して、公平性を確保することでその反発をできる限り小さくしようとする試みではないかと推察される。
中国には地方政府がインフラ投資を行うために設立した「融資平台」と呼ばれる公営企業がある。この融資平台は公式発表でも48.7兆元(830兆円)の債務を抱えているとされているが、実際の債務はこれよりも遥かに巨大で、この4倍くらいに達するのではないかと推察される。
この「融資平台」に関して7月上旬、中国の銀行の間で「15号文」と呼ばれる文書が出回った。「15号文」とは、銀行に対して融資平台への融資を打ち切ることを求める通達である。
銀行が追加融資を止めれば、融資平台は間違いなく破綻する。それは地方政府の財政破綻を浮き彫りにするばかりか、追い貸しをやめた銀行が次々と破綻することにもつながる。