それでも「今後も『絶対』家族全員一緒と言いたくはない」と牧野さんは話す。
「絶対という言葉はバイアスになってしまいます。そもそも自分たちらしさはなんだろうと家族みんなで話し合った結果、さまざまな枠組みを外して事実婚という新しい形に選ぶことにしたわけです。だから、家族を枠にはめてしまうような『絶対』という言葉は使いたくない。それよりも、何か変更があったら正直に、その時々で話していけたらと思っています」
新聞やテレビで事実婚の話をするにつれ、批判の声も集まるようになった。検索すれば、「理解できない」「身勝手」と評する声も見つかる。牧野さんはその批判さえも、言葉を選びながら子どもに教えているという。
「いろんな考え方の人がいる。ネガティブな意見があって当たり前です。子どもは『(ネガティブなことでも)ちゃんと話をしてくれるママが好き』と言ってくれるので、それが本当にありがたいです」

義両親に理解してもらえなくても構わない
一方、双方の親の受け止め方は異なっていた。夫の母は「理解はできないけれど、話は聞いてくれた」という反応だった。しかし、必ずしも理解してもらう必要はないと考えているため、足を運んで説得にいくようなことはしなかった。
「『お母さんは間違っています。私たちのことを理解してください』なんて言ったら、義理の母の意見を否定してしまって嫌な気持ちにさせてしまうだけ。義理の母が何十年も積み上げてきた価値観は否定したくありません。私たちは事実婚という選択をしますが、その選択に合わせて義母の考えを変える必要はないんです」
牧野さんの実母は「好きなようにしなさい」と言ってくれたものの、夫の両親に申し訳ないともこぼしたという。さらに、実母は義理の両親に頻繁に連絡を入れている様子だというが、牧野さんは静観している。
「母が義実家と円満な関係を保ちたいと考えているなら、それは尊重すべき。でも私なら娘が結婚後に同じような決断をしても連絡しないと思います。娘が決めた道なら」