2021.08.20
# 新型コロナウイルス # ワクチン # COVID-19

2回のワクチン接種は同じ会社でないといけないの?

免疫学の第一人者が教える「意外な結論」

新型コロナウイルスデルタ株が猛威を奮っているが、ワクチンの在庫不足もあり、ワクチン接種は十分に進んでいない。2021年8月12日時点で2回接種率は35.5%にとどまっており、7割弱の国民がワクチンによる十分な獲得免疫を得られない状態にいる。そんな中、政府は、8月16日より、英アストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチン計5万2800回分を緊急事態宣言発令中の6都府県に供給すると発表した。

現在、日本でファイザー製、モデルナ製、アストラゼネカ製が認可され、同じ製品による2回接種が基本とされているが、異なる会社のワクチンの組み合わせが可能となれば、接種のスピードを上げることができるはずだ。また来年以降、3回接種が行われるようになれば、同じ会社で打ち続けるのか、それとも異なる会社の組み合わせを許すのかは大きな問題になってくる。

免疫学の第一人者で、『新型コロナワクチン 本当の「真実」』を緊急執筆した宮坂昌之氏(大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授)が、最新の科学的エビデンスをもとに、この問題を徹底分析した。

理論上はOK...それ以上...?

ワクチン接種を2回受ける際に、現在はファイザー製を先に打てば、次もファイザー製を打ちます。モデルナ製でもアストラゼネカ製でもこれは同じで、必ず同じ会社のものを使います。どうしてかというと、最初に行われた海外での大規模臨床試験で同じ会社のものでの2回接種しか行われておらず、その他の組み合わせのデータが存在しなかったからです。

しかし、免疫学的に考えると、異なる会社のものを組み合わせても問題がないはずです。それは、前述のワクチンはいずれもが新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を抗原としているからです。したがって1回目と2回目で異なる会社のワクチンを打っても、同じスパイクタンパク質に対する抗原刺激が繰り返されることになるので、2回目の接種のあとには必ず2次反応が起こり、強い免疫効果が見られるはずです。

最近は、海外でわざと異なる組み合わせにした場合の臨床試験が行われ始めていて、予備的データでは、異なるものを組み合わせたほうがより強い免疫が誘導できるかもしれないとのことです。Hybrid immunity(雑種免疫)という言葉が使われ始めています。

動物を交配する時に少し違う由来のものを混ぜたほうが強い子孫ができることをhybrid vigor(雑種強勢)といいますが、もしかするとワクチンでも同様のことが期待できるのかもしれません。下記の図は、『Nature Medicine』に掲載された雑種免疫が実際に効果があることを示したデータです。

ワクチンを2回接種した後の中和抗体価、ウイルスのスパイクタンパク質に反応するB細胞の数、IgG抗体量、IgA抗体量のいずれの指標でも、アストラゼネカ製ワクチンを2回接種した場合よりも、アストラゼネカ製とファイザー製を組み合わせたほうがずっと良い結果が出ています。

図:雑種免疫の一例

さらに結構なことは、アストラゼネカ製+ファイザー製の場合、英国型変異株(アルファ変異株)、南アフリカ型変異株(ベータ変異株)、ブラジル型変異株(ガンマ変異株)、すべての変異株に対して高いレベルの中和抗体ができていることです。

もし異なるワクチンを組み合わせた接種の安全性が確認できれば、日本のようにワクチンが不足している国の選択肢が広がります。たとえば40歳代、50歳代の人たちに早くワクチン接種を広げるためには、在庫が潤沢にあるアストラゼネカ製のウイルスベクターワクチンで初回接種をしておいて、ファイザー製あるいはモデルナ製で2回目の接種を行うという可能性です。

早ければ2022年からは国産ワクチンが使えるようになるはずなので、このハイブリッド方式を用いれば、可能性がもっと広がります。たとえ国産ワクチンにファイザー製、モデルナ製ほどの有効率がなくても、2回目接種に使えばハイブリッド効果が期待できるかもしれないからです。

新型コロナワクチン 本当の「真実」

免疫学の第一人者として絶大な信頼を得ている著者が、最新の科学的エビデンスをもとに新型コロナワクチンの有効性と安全性を徹底分析。

新型ワクチンは本当に効果があるのか? 
本当に安全といえるのか? 
将来予期せぬ問題が発生することはないのか? 
英国型変異株(アルファ株)やインド型変異株に対しても有効なのか? 

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