工藤勇一校長が目指す、人類を滅ぼさないための「対話」の教育

対立を乗り越えるために必要な姿勢

学校の大切な役割

終わりになりますが、これからの学校をどんな場にしなければならないのかについて、僕なりに整理しておきたいと思います。

一つは言うまでもなく、

「すべての子どもたちが社会でよりよく生きていけるような力を身につけていく場」

であることですが、これからは、もう一つ、次のような場でなければいけません。

「すべての子どもたちが持続可能な社会を築いていくための方法を共に学び合う場」

です。

今や科学技術は我々の予想をはるかに超えたスピードで進化しています。それに伴い、環境問題や人口爆発、食料問題、平和問題など、今まで以上に人類が抱えている問題は一層深刻になってきています。これらはもはやどこかの国の強い力で解決できるものではなく、世界全体が協力して考えていかねばなりません。もし、人間がこれまでどおりの自由な社会経済活動を続けていくのであれば、そこで生まれる対立やジレンマは決して解決できるわけはありません。

「2030年。人類は滅ぶかどうかの岐路に立つ」と多くの科学者や専門家はそう言います。

2015年の国連で、SDGsはそうした背景のもとに161ヵ国の賛同を得て採択されました。持続可能な社会を築くために、世界中の人びとが2030年までに努力し実現する17の目標です。このままでは人類は滅びる。今、世界はこのことを強く意識しはじめました。

Photo by iStock

鴻上さんとの対談でも話題になりましたが、

「みんな違っていい」

これを受け入れることはものすごく苦しいことです。なぜなら、自ずとそこには対立・ジレンマが生まれるからです。そうした対立やジレンマもひっくるめて丸ごと受け入れ、対話する。そして、「誰一人置き去りにしない持続可能な社会を作る」という共通の目的で合意する。そのためのスキルと経験を学ぶ場が「学校」であるのだと僕は思います。

世界中のすべての学校をこのことが学べる場にしていかねばなりません。その先にしか社会全体の幸福、そして平和は来ないのだと確信します。僕もそのための努力を学校という現場で、今後も続けていきたいと思っています。