市販ベビーフードは子育てをないがしろにしてる?

先日、SNSでこんな書き込みが話題になった。
育児疲れしたママがベビーフードをたくさん買い込んだ写真をアップしたところ「自分達を優先して子どもをないがしろいしている」と批判されたというものだ。それに対して様々な意見が飛び交った。

育児のデマ情報撲滅にも熱心な小児科医の今西洋介医師はこう述べた。

こういう我流育児の他家庭への押し付けは、世の親を苦しめます。 育児は決して一通りでなく、家庭の数だけ方法があります。

ちなみに我が家もベビーフードのお世話になりました。子育てにまつわる『神話』と呼ばれるデマは、こればかりではありません。母親は妊娠を望んだ時点から出産、育児とさまざまな場面でデマと遭遇し、苦しんでいるように感じます。

この話には「よくぞ言って下さった」と感動の声が殺到した。

そこで、母親たちを苦しめる「育児神話」について、高年齢出産で様々な忠告や非難にうんざりした経験を持つライターの若尾淳子さんが自身の経験を振り返りつつ、多くの子育てママの現状を知る今西医師に話をうかがった内容を前後編でお伝えする。まずは、若尾さんが妊娠出産、育児で浴びせられた「よいママ神話」についてまとめてもらった。

 

ほぼすべての育児神話から脱落……

子育てにまつわる数々の「神話」は、世の母親を不幸にすることはあっても、幸せにすることはないと思う。

「女性には生まれつき母性本能がある」「陣痛に耐え、自然分娩してこそ母性が湧く」「ミルクで育った子は体が弱い」「離乳食に市販のベビーフードを使うと味覚が育たないし、栄養が偏る」「3歳までは母親が手をかけて育てないと、脳の発達に影響がある」……。

母親は妊娠中、出産後、育児とさまざまな場面で「よいママ神話」を浴びせられ傷つくことも多い。photo/Getty Images

もっと前には「おしっこしても不快感がない紙オムツを使うと、オムツ外しが遅くなるし、感覚が鈍ったバカな子になる」だとか「(抱っこやおんぶとは違い)ベビーカーを使うと、お母さんと密着できない赤ちゃんが情緒不安定になる」なんていうものもあったらしい。

いったいどこの誰が、いやどんな意地悪な神様がこんな神話を作り出したのか。
41歳で奇跡的に子どもを授かり、高齢出産をしておきながら、これらほとんどの神話からこぼれ落ちた私は常々、不思議に思っていた。

帝王切開で出産し、ミルク育児。生後4ヵ月から保育園のお世話になり、家での離乳食は市販のベビーフード。もちろん紙おむつもベビーカーもフル活用で育てた息子は現在、元気に中3になった。今となっては「息子が絶賛反抗期継続中なのは、ベビーカー多用による情緒不安定?」とか「高い塾代を払って夏期講習に通わせなきゃならないのはベビーフードを食べて脳の発達がイマイチなのが原因かな」なんて、1ミリも思わない。けれど、息子が幼かったころの私は、育児神話を思いっきり無視しつつ、心の奥底では神話に囚われ怯えていたように思う。