映画を観て、「自分だったら」とは思わない

そんな彼がこの夏、フランソワ・オゾン監督の最新作「Summer of 85」のスペシャルミュージックビデオのナレーションを務めた。

「初恋の美しさと儚さを切り取った映画ですが、16ミリのフィルムを使って、ざらついた質感の中に、ものすごく繊細な心の揺れを描いています。“初恋”って、誰もが通る道じゃないですか。どういうふうに相手に触れていけばいいんだろう。どうやって見つめればいいんだろう。そんなこともわからない。でも、だからこそ強烈に惹かれ合う。その、2人が惹かれあって行く瞬間を、ものすごく丁寧に描いていて、シンプルに僕も、この映画の世界に浸って、素敵な時間を過ごすことができました」

写真:山本倫子
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「こういう役を演じたいと思うことはないですか? 役柄に嫉妬するとか」と訊くと、すぐに、「それはないですね」と答える。

「映画を観るときは、僕は観客に徹します。だから、俳優としての目線で見ることはないかもしれないです。演じることの楽しさというのは、いただいた役を擬似体験できることです。ただ、映画制作はチームの作業なので、僕ら俳優は、作品が伝えたいメッセージを伝えるための一つの部品になる必要がある。そのスイッチが入るのは役をいただいたときなので、映画を観て、『自分だったら』とは思わないです。それは作り手の目線としてもそうです」

写真:山本倫子

「誰かの思いがあっての役」であることを、ここまで強く自覚している俳優も珍しい。中学のときに自ら映画を撮って、仲間達の拍手喝采を浴びて以来、彼の中には、プレイヤーとしてだけでなく、クリエイターとしての視点も備わっていたのかもしれない。

「クリエイションもパフォーマンスも、僕はどちらも好きなんです。現状は俳優というフィルターを通して作品づくりに関わっていますが、今後はもっと経験を積んで、クリエイターとして関わって、自分自身のメッセージを届けていけたらいいなとは思います。ちゃんと長編が作れるほどの強い思いが生まれてきたら、映画を作ってみたいですね」

そうして彼はずっと、未来の自分のために、思いついたことを書き記している。

「芸人さんでいうところのネタ帳みたいな感じです。移動中とかだとスマホに残したりもしますけど、最終的にはノートに手で書き留めています。アイデアを残すだけならタダなので(笑)」