いまの俳優に必要なのは、俯瞰でものを見られる目

ところで、SNSの台頭で、芸能人が自分からメッセージを発信できるようになり、磯村さんの両親が心配していた「得体の知れない芸能界」のイメージも変わりつつある。磯村さんは、入る前と入った後で、芸能界に対する印象は変わったのだろうか。

「ふふふ(笑)。変わったというか、華やかな世界だと思っていた芸能界は、入ってみたら闇だらけだなと思いました。闇だらけというと誤解されるかもしれないけれど、とにかく芸能界はとても複雑で、いろんなルールや不文律がある。正直、この世界に足を踏み入れたばかりの頃は、生きづらそうで狭い世界だなと思いました。それで僕自身も、ものづくりにまつわるお金の流れやシステムを学ぶようになったんです。

いまは時代の転換期なんですよね。いますぐには動けないかもしれないけど、新しいことを生み出すマインドを持つことや、いま何が起きているかを知ることは絶対必要だし、そういうことにちゃんと関心を払いつつ、次に自分は何ができるのかを探っているところです」

写真:山本倫子
 

これからは、パフォーマーやプレイヤーとクリエイターの境目が曖昧になっていくのではないかと、磯村さんは予感している。そこで大事になっていくのは、俯瞰でものを見られる目ではないのか、と。

「僕は、SNSネイディブ世代ですが、SNSとは一定の距離を置くようにしています。俯瞰でものを見られなくなるのが怖いからです。すぐにいろんな情報を手に入れられるSNSはもちろん便利だけど、その情報が真実かどうかわからなかったりもします。

とくに社会や政治の情報は信憑性を疑うものも多いので、SNSではチェックしないです。エゴサーチですか? それもしないです。所属事務所がチェックしてくれているので任せているし、そういうスルースキルはあるほうなんじゃないかなと思います(笑)」