社会の様々な情報を人々に伝える「ニュース」。あまりにわたしたちの身近にあるために、その「良さ」を意識する機会は少ないかもしれません。しかし、レストランで料理のうまいまずいを味わい分けるように、ニュースの質に注意を払って報道を見てみると、より豊かに社会と関わることができるかもしれない——。
では「作り手」の側は、ニュースの「良さ」を実現するためにどのようなことを考え、どのような模索をしているのでしょうか。毎日新聞からインターネットメディアに移り、その後フリーランスとなったノンフィクションライターの石戸諭さんは『ニュースの未来』(光文社新書)で「良いニュース」について現場での経験を踏まえて考察しています。

ネットでの「報道」の現在
僕の2010年代は、インターネットメディアの可能性に賭けた10年でした。時代は大きく変わると思い、それまで働いていた新聞社でキャリアを積み重ねるという選択を捨てることになんの躊躇もなく、インターネットメディアに飛び込みました。ニュースの未来は、インターネットにあると思ったものです。
現実は、みなさんが知っての通りです。著名人がテレビやツイッターで何を言ったとか、「私」の身の回りにおきたことをおもしろおかしく語るとか、お手軽なインタビューや派手なオピニオンばかりが「ニュース」として流通していくようになりました。ある意味では、これこそが今のメーンストリームです。
多様性に富んだ現場に足を運ぶという仕事は、手間のわりには受けが悪いものです。