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ハイブリッド戦はもう始まっている
小川 和久 プロフィール

空母キラーミサイルは「幻」か

さらに中国の軍事力について見落とされているのは軍事インフラの立ち後れの問題である。代表的なものは、軍事力がハイテク化されるほどに高い能力が必要になるデータ通信衛星だが、米国が専用衛星TDRS (Tracking and Data Relay Satellite) 15機だけでなく、データ中継に使える衛星10機以上を保有するのに対して、中国は天鏈1号(CTDRS-1) をようやく5機運用しているに過ぎない。

このような軍事インフラの課題は、中国の対艦弾道ミサイルにも影を落としている。

米国の空母を狙う中国の対艦弾道ミサイルの脅威は米国の専門家によって指摘されてきた。しかし、中国は2020年8月末に初めてDF21D(射程1500キロ)とDF26(同4000キロ) 計4発を南シナ海に向けて発射するまで、ゴビ砂漠に設けた陸上標的以外に発射したことはなかった。

南シナ海での発射では移動している船舶を直撃したとの中国側の非公式な発言もあるが、空母を狙うための一連の能力が備わっていないことから、ブラフに過ぎないと受け止められている。

移動している米国の空母を弾道ミサイルで直撃するには、発見から位置の確定、継続的追跡、空母の重層的な防御の突破、戦果の確認に至るキル・チェーンと呼ばれる機能が備わっていなければならない。

まず、空母打撃群の発見と追尾の手段にはOTH(超水平線)レーダーと偵察衛星がある。OTHレーダーは精度が悪く、施設も巨大なため緒戦で破壊される運命にある。また、移動中の空母を継続して追尾し、直撃させようとすれば3つの極軌道にそれぞれ数十個の偵察衛星を挙げなければならない。中国にはそれが決定的に不足している。

 

航空機や艦船によって空母を追尾しようとしても、空母側の戦闘機、電子攻撃機、原子力潜水艦によって阻止される。さらに米国の空母打撃群のミサイル防衛能力は米本土のものと比較にならないほど濃密である。これをすり抜けて直撃するのは至難の業だろう。

弾道ミサイルが空母を確実に破壊できたかどうかの戦果の確認も、中国側の偵察衛星の不足と空母側の阻止能力によってままならない。いまのところ対艦弾道ミサイルは幻に過ぎないのだ。

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