今年の6月25日、アメリカ国家情報長官室は、2004年11月から今年3月までに寄せられた「明らかに異常な動き」をしている飛行物体についての144件の報告の大半を「正体について確かな結論を出せない」と発表した。未確認飛行物体(UFO)である可能性を明確に否定しなかったことで、世界が騒然となった。
かと思えば7月には、イギリスの富豪リチャード・ブランソンやAmazon創業者ジェフ・ベゾスら民間人が次々と有人宇宙飛行に成功し、地球人のほうも宇宙との距離を縮めている。もしかしたら、「その日」は、意外に近いのかもしれない――。
これは、そう遠くない未来に、太陽系から遠く離れたところに建設された、天の川銀河の宇宙人が集う「惑星際宇宙ステーション」を、地球人代表の一人として訪れたあなたが遭遇した、貴重な体験の記録である。

地球人と月のかかわり
地球へのお土産を、宇宙のめずらしいカレンダーにすることを思いついた"あなた"は、カレンダー売り場のヨーダ似の店員から、連星が過半数の宇宙レベルでは太陽を2つ以上持つ星が珍しくないこと、1つしか恒星(太陽)を持たない地球はむしろ"アブノーマル"なことを渾々と聞かされました(〈地球人の科学が「宇宙人の平均」よりも遅れている「たった1つの理由」, https://gendai.ismedia.jp/articles/-/86397〉)。
複数の太陽の動きのもとでは、複雑な暦となり、毎日が煩雑となる一方で、地球とは比べ物にならないスピードで天文学や数学が発展することを思い、地球のカレンダーが単純で頼りないものに思えてくるのでした。そんなあなたに、ヨーダはさらに追い討ちをかけるかのように話を続けました。
「地球の特殊さは、太陽が1つしかないことだけじゃない。地球には月も1つしかない」
ああ、たしかに。太陽系のほかの惑星がもっている衛星の数をみると、水星と金星はゼロですが、火星は2個、木星は79個、土星は82個、天王星は27個、海王星は14個(今後も観測によって増える可能性あり)と、衛星が1個しかないのは地球だけです。なんと地球は太陽系でも「変わり者」だったのです!
地球人は古くから月を暦づくりに利用してきました。月の動きをもとにつくられた陰暦(太陰暦)には、太陽の動きをもとにする太陽暦よりも長い歴史があります。現在、日本は太陽暦の一種のグレゴリオ暦を採用していますが、いまでも陰暦を使用している国はたくさんあります。
暦に利用されるのは、月の「公転周期」ではなく「会合(かいごう)周期」と呼ばれるものです。公転周期は月が地球を一周する周期で、27.3日です。しかし、これは暦には使われませんでした。なぜなら月が地球を一周してもとの位置に戻ったとき、地球も太陽の周囲を公転していることによってもとの位置にはいないので、地球と月は27.3日前と同じ位置関係にならず、地球からは同じ月に見えないからです。
そこで、先に進んだ地球に月が追いつくまでの時間も加えたものが会合周期です。その周期は29.5日で、これが暦に利用されました。たとえば満月から次の満月までがこの周期となります。

こうして、月を利用した暦では会合周期が暦の1ヵ月の単位となったのです。
ストーンヘンジ遺跡に残された謎の数字「19」を推理
イギリスにあるストーンヘンジ遺跡は、紀元前2800年から紀元前1100年ころに使われた祭祀場であろうと推定されていますが、当時、最先端の天文台でもあったようです。
そこには大きな縦長の石が、神殿を囲む柱のようにきれいな円形に並んでいて、頭には屋根のように横に寝かせた石が置かれています。「サーセン石」と呼ばれるこれらの石は29個あり、さらにサイズが半分の石が1つあります。これは月の会合周期29.5日を表していると考えられています。
また、円形の中心あたりには「グレートトリリトン」と呼ばれる最大の立石があり、祭壇だったとみられています。そこから北東方向に離れた場所には「ヒール石」という石があり、この2つの石を結ぶ直線の延長上に、冬至の日、太陽が沈みます。昼の時間は冬至を境に延びてくることから、この日に死から再生へ向かうための儀式が行われたようです。
さらに、サーセン石の内側には、馬蹄形に配置された巨石が並んでいて、そのさらに内側には、「ブルー石」と呼ばれる19個の小さい石が、馬蹄形に沿って並んでいます。この19という数には、2つの意味が見いだされていました。

1つは、満月や新月などが次に同じ日付にくるまでの周期「19年」という意味です。たとえば2021年の「1月1日」に満月なら、次は19年後の2040年「1月1日」に満月になるということです。これは「メトン周期」と呼ばれています。
もう1つは、「日食」の周期という意味です。日食はご存じのとおり太陽の前を月が通るために太陽が欠けて見える現象で、地球からの見かけの動きでは、太陽が通る黄道と、月が通る白道(はくどう)との交点で起こります。あるところで交点ができてから、次にどこかで交点ができるまでの期間を「食年」といいます。
食年は1年よりやや短く、346日です。そして、同じ場所では日食は19食年(=6585日)ごとに起こっています。通常の1年に換算すれば、18.04年ごとです。これは「サロス周期」と呼ばれています。
このように「19」という数には、2つの周期にかかわる特別な意味があるのです。古代の地球人も当然ながら、太陽だけでなく月の運行についても研究し、こうした知識をもっていました。とくに日食は、驚くべき奇跡と映り、神秘の現象とおそれられてもいたことでしょう。