「人生が詰んだ」瞬間
――理想の人生と現実とのギャップが大きすぎたんですね。
大木:28歳のある日、東京メトロ日比谷駅のホームで突然歩けなくなってしまいました。訪れると信じていたキラキラな人生が消えてなくなり、会社も行けなくなって辞めてしまった。

人生、詰んだなって思いましたね。貯金も3万円くらいしかなかったから、倉庫作業のアルバイトを始めたんですが、正直、その頃どうやって生きていたかはあまり覚えていません。
それから30歳になるまではつらい日々が続きましたが、その中で気づいたのは仕事の評価もハイスぺ男子との結婚も、自分の本意ではなく、周りから羨ましがられたいだけだったこと。大切なのは見てくれや世間体ではなく、自分が幸せと感じるかどうかだったということです。
私は自分の経験や思いを小説に書くことで、どん底から抜け出す糸口を見つけることができました。だから、フィクションですけどリアルな部分も含まれているし、嘘偽りのない思いを文章に込めている。
私は書く仕事に就き、書くことで救われてきました。でも、吐き出す場所がなくてもがいている子も多いと思うんです。そんな女の子たちに『MILK』を通して、搾取されて苦しんでいるのはあなただけじゃないって伝えたいし、癒しの選択肢がいろいろあることを広めたい。そして、少しでも救いになってくれたら嬉しく思います。
後編〈「アイドルは恋愛NG」なのか? アイドル卒業で「人生詰んだ」私が伝えたいこと〉では、「元アイドル」という十字架を背負って生きることになるアイドルのセカンドキャリアについて大木さんと一緒に考えていく。
取材・文/中川明紀