「アイドルは恋愛NG」であるべきか
――『MILK』も前作『シナプス』も、不毛な不倫が一つのテーマになっています。芸能活動の中で見てきた女の子の立場の弱さを伝えたいとのことですが、芸能界は危ない誘いが多いものなんですか。
大木:多いわけではないですが、明らかに体目当てだろうという飲みや食事の誘いはありました。それも番組のキャスティングなんかが絡んでいると無下にはできません。
私には双子の姉がいるので、危険を察知した時には姉と一緒に行ったりして回避していましたが、突っぱねることができずに流されてしまうタレントさんも稀にいました。
問題なのはそれが“搾取”だと気づかずに、翻弄されて恋愛だと思い込み、突き進んでしまう子がいることです。
そして既婚の年上男性や、仕事上で権力を握る男性との疑似恋愛に苦しんでしまう。夢や目標に向かってがんばっているところに付け込んで搾取されていることに気づいてない。むしろ自発的に破滅の道を選んでると思わせられているのを、身近なところで見ていて、本当によくないなって思っていました。

――恋愛がご法度のアイドルからすると、よりその思いは強かったかもしれませんね。
大木:実は、私が所属していたSDN48は20歳以上のセクシー路線OK、既婚者もOKというちょっと特殊なアイドルグループだったんです。だから恋愛自体が悪いことだとは思っていません。
私自身も小さなころから女優として活動をしていたので、「アイドル」というカテゴリに限らず芸能界全体を通じて隙間に入り込んできた男性の甘い言葉を、本当の愛だと勘違いして沼に落ちていく現象に憤りを感じていたのです。
――アイドルの恋愛NGというルールはどう思いますか。
大木:私はあっていいと思います。すごく現実的ですけれど、アイドルも一つのビジネスでファンの方からお金をいただいているからです。
推しの恋愛話なんて聞きたくないというファンの方がいるなら、やっぱり現役のうちは絶対にしちゃいけない。もっとも、プロとして自覚を持ち、週刊誌の目から完璧に逃れ「誰にも情報が漏れない」ことを前提にするならば、しても良い思いますが……。
だけど、一方で「アイドルだから」と型通りに振舞う子は人間味がないと感じてしまうところもあります。恋愛が原因でアイドルを辞め批判された女性がいたとしても、それが結果的に彼女にとっての幸せであれば、選んできた道は間違っていなかったことになるし、良い人生の選択をしたことになると思います。