「元アイドル」という肩書きと共に行きていく
――アイドル活動をしてきたことが人生の糧になっているんですね。
大木:そう思います。だから私もアイドルだったことは全く後悔していないし、人生の通過点としてはおすすめです。アイドルという職業が夢の頂点、人生のピークって思う方が多いかもしれませんが、そうじゃない。あくまで通過点です。
元アイドルの中にはよい経験だったと思っている人もいれば、「もっと上にいきたかった」と悔しさを抱えている人もいます。でも、本の取材を通して分かったことのひとつが、多くの女性がその経験を人生の糧にして今を生きているということ。アイドルだった過去は消すことができませんしね。どんなに隠そうとしても調べれば出てきてしまう、「消せないタトゥー」のようなものです。

私もいつまで「元アイドル」と言われ続けるんだろう、と悩んだこともあります。
ただ、調べてみると文筆家・脚本家の中江有里さんもアイドルとして活躍された方ですし、芥川賞作家の川上未映子さんは元歌手。「元◯◯」という「肩書き」が外れて、活躍されている方もたくさんいるんですよね。
肩書きをどう見るかは人によって違うので、私が元アイドルということを自ら外そうとは思いません。それは、読者の方が自由に決めるべきことですから。
これからもっともっと女性の葛藤、人間の性をきちんと描ける存在になりたいし、なっていくので、作品を読んでもらうことで、元アイドルが下駄ではなく人生の糧であることを理解してくれる人が増えてくれればいいなって思います。
取材・文/中川明紀