米テスラが目指すEV2000万台も2030年が目標だ。つまり、年間に2000万台が販売されるようになるまでは、まだ10年から15年もの時間がかかる。
そして当然ながら、「EVが年間2200万台のフローとなってからも、ストックの14億台に置き換わるまでには、さらにかなりの時間を要することになるだろう」と、柴田氏は指摘するのである。
エビデンスなき「脱炭素ごっこ」
こうしたEVシフトを時系列に置き換えた考察を、日本のメディアはあまり報じてはこなかった。
そもそも世界の石油需要の55%は輸送用燃料の需要で占められているが、輸送機関は自動車だけでなく、航空機や船もある。
これらすべてが電気にシフトするわけではない。

自動車が消費する石油は世界の石油消費の21%に過ぎない。EVシフトが急激に進んだとしても残るガソリン需要はどれくらいあるのか。これを正確に見極めることは難しい。
先述したとおり欧州の石油消費は世界の12%に過ぎず、いまや過半は中国やインド、ブラジル、アジアやアフリカの新興国、途上国で占められている。
「世界が脱化石に進もうと、これら新興国がコストの安い石油やディーゼルを使って経済成長を謳歌しようとすれば、2035年の世界の石油需要は増加する」
こう予想するシンクタンクもあるのだ。