農協職員の「自爆」営業が、全国で横行の疑い

JAグループの闇
窪田 新之助 プロフィール

新人は1ヵ月以上の手取りが消える場合も

勧誘する相手は、なるべく年齢が若い人を選ぶ。若いほど掛け金が安くなるので、肩代わりする分が少なくて済むからだ。

JA福岡京築の2人の職員に自爆の金額について聞いた。1人は「年間20万円」で、もう1人は「僕は毎年20万円から30万円」だった。肩代わりする金額としては一般的だという。2によれば、同JAの新入職員の月給は「手取りで15万円程度」。つまり新人にとっては1ヵ月分以上の手取りが自爆で消える計算になる。

職員は毎年、ノルマの期限が近くなれば、営業のために残業するのは当たり前。深夜まで家を回ることもたびたびある。2人の職員によれば、「残業代が出たことは一切ない」。

達成が難しい見通しとなれば、すでにノルマをこなしている職員が余計に取った契約分について、組織には内緒で身銭を切って買い取る。ただ、これだけのことをしても、「一切自爆せずに済む職員は毎年2~3割しかいない」という。

もちろんJA共済連は、こうした自爆の存在を認めていない。ただ、JA共済連の県本部の運営委員会会長を務めたことがある人物に尋ねると、「自爆はある」と打ち明けた。同会長は当該県のJAの組合長の中から選出される。JA共済連は、JAの経営を知り尽くしている人物の言葉を否定することはできないはずだ。

自爆営業が横行しているJA福岡京築

4つの違法性の疑い

自爆営業は、法的にも問題がある。

「少なくとも4つの点で違法性が疑われる」。こう指摘するのは、大阪弁護士会所属で労働事件に詳しく、著書に『JA金融法務入門』(経済法令研究会)がある弁護士の中島光孝さん。4つとは、改正労働施策総合推進法(通称、パワハラ防止法)と刑法、労働基準法、労働契約法である。以下、それぞれについて説明していきたい。カギカッコはすべて中島さんの説明である。

まず、パワハラ防止法では、パワハラに該当する6つの類型の1つに、仕事における「過大な要求」を挙げている。同法は、大企業については2020年6月から、中小企業については2022年4月から適用される。事業主はパワハラ防止に必要な措置を講じなければならない。「JAが職員に限界を超えたノルマを課しているなら、パワハラの概念に該当する。総点検して、コンプライアンスを徹底する必要がある」

次に刑法では、第223条で「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する」と定められている。「職員が販売する商品について、自分で金を出して買う義務はない。組織や上司が脅迫して自爆をさせているなら、第223条の強要罪に当たる」

労働基準法は、第16条で「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と定めている。「ノルマを達成できない罰則として、自分の金で商品を買い取らせている場合は違反している可能性が出てくる」

労働契約法は、第3条第3項で「労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする」と定めている。「職員は自爆をすれば生活費が減るので、ワークライフバランスの条項に反する可能性がある」

関連記事