いわゆる「美術」の外にいて、創作し続ける人がいる。時に断絶された世界で、誰かの、何かのためでなく、沸き立つ表現。魂が溢れ出るような心揺さぶる作品と、その作り手たちを訪ねました。今回のスポットは、「PICFA」です。

アウトサイダー・アートって?
既存のアートに対し「アウトサイド」とされる、美術教育を受けていない人による、独自の芸術活動のこと。障がいや生きづらさを抱える人の作品でも知られるが、身近な日常で、刑務所で、あるいはどこかで人知れず、様々な表現が生まれている。独創的で自由で、これこそ創作の真髄と感じられるような、魂を燃やす作品と出会って欲しい。

Noriyuki Yasunaga
安永憲征

ポーチを小脇に抱えたファッショナブルな女性や、シャンパングラスを片手に笑顔の面々。鮮やかな色彩と一度見たら忘れられない独特のタッチで、人物や動物がユーモラスに描かれる。これらは施設にある雑誌から選んだ写真を模写したもの。

女性にはまつ毛、男性には必ず太眉を描くなど、作者のフィルターを通してキャラクター化され、新しい生命が吹き込まれている。自閉症のため、以前の施設では簡易的な作業をしていたが世界を広げたいと、1年ほど前、20代半ばに初めて〈PICFA〉で筆を執った。

その時から、作風は変わらない。画用紙に本番さながらの下描きをしてから、気に入ったものだけをアクリル絵の具とマジックで黙々と、のびのび迷いなく仕上げていく。

 

Teppei Kasahara
笠原鉄平

デザイナーの父の下で幼少期から絵を描いて育ったが、東京にいた20代の頃、人とのコミュニケーションに躓き、統合失調症を発症して引きこもるように。その後、母方の実家に戻り、絵を再開。人間、動物、木、ロボットもいる個性的な群像を、0.03mm~0.7mmのミリペンで空白を埋めるように細かく描いている。

喜怒哀楽の豊かな感情表現、特徴のある人物像の背景には、海外放浪の旅や吉祥寺の夜の店でのアルバイトなど、43歳になる彼の人生経験があるだろう。時に頭を抱える人や怒る人も描かれるのは、自身や作品を否定する幻聴があり、それと格闘しながら画面に向かっているからだ。毎日、新聞を隅々まで几帳面に読み、寡黙にコツコツと作品と向き合っている。

PICFA

兄に知的障がいがあり、幼い頃から福祉に疑問を抱いてきた原田啓之が、前施設での経験を元に2017年7月に設立。障がいのある人がアートを介して社会とつながり、経済的に自立することも目指し、絵画制作や企業との商品開発を行う。病院に併設された福祉サービス事業所としては日本初となり、通院者や地域の人が自由に訪れる。
佐賀県三養基郡基山町大字宮浦399 -1 きやま鹿毛医院内


●情報は、FRaU2021年8月号発売時点のものです。
Text & Edit:Asuka Ochi

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