コロナ禍の舞台、変更の中で得たもの

俳優になってから、「良い作品に出たい」という思いがずっとあった。様々な監督や演出家と出会い、新たな自分を引き出してもらいたい。魅力的な俳優と共演して刺激を受けたい。それが自分の成長につながればいいと。

そんな林さんが、今年1月に「フェードル」という舞台に出演したことで、エンターテインメントに対する向き合い方を方向転換させることに。「フェードル」は、17世紀フランス文学の金字塔的なラシーヌの戯曲。林さん演じる義理の息子イッポリットに恋してしまうアテネ王妃フェードルを大竹しのぶさんが、その乳母をキムラ緑子さんが演じた。本来は1月7日に初日を迎えるはずだったが、その日に緊急事態宣言が発令されることになり、開催計画が見直された。客席の収容率を50%にし、初日も10日に変更になった。

 

「僕は1990年の12月生まれなので、30代のスタートは『フェードル』とともにありました。十分な準備をして、万全の体制で臨んだつもりでしたが、直前に開催する上で色々な変更を余儀なくされて、そのことはショックでしたし少し混乱もしましたけど、その上で立った舞台には、特別な感慨があって……。エンタテインメントに触れることが当たり前じゃなくなった時代に、この空間は絶対になくなってはいけないものだとより強く感じました。どうしても観たかったけれど諦めざるを得ないお客さまもいれば、リスクを冒しても来てくださったお客さまもいる。ただ、舞台に立っていると、緊迫したシーンでは、会場中にピンと張り詰めた空気が漂ったり、最後の拍手が振動として身体に伝わってくるのを感じたり、不思議な一体感があったんです」

撮影/篠塚ようこ

それまでは、演じることが楽しかったし、自分自身を豊かにするためにもずっと俳優をやっていきたいと思っていた。

「でも、それとは別に、自分たちの仕事が、誰かの心に関わるものだということを痛感しました。僕らがお芝居をすることで、誰か一人でも喜んでくれるなら、そんな幸せなことはないと感じました。自分が成長することや評価されることよりも、人を楽しませることの方がずっと有意義じゃないか。そんなふうに思ったんです。SNSを通して、僕の活動を毎日の生活の励みにしているという声を聞くこともあって、それが僕の原動力になっているので、これからはもっともっと、人の心にいい影響を与えるお芝居ができるようになりたいと思いました」