政治における力の源泉は、言うまでもなく「数」だ。清和研=新・安倍派に加えて、盟友・副総理の麻生太郎が率いる志公会53人、目をかけてきた前政調会長・岸田文雄率いる宏池会47人を合わせれば、386名の自民党議員の過半数を超える。
これが意味するのは、安倍が「次の総理」を決める権限をほぼ手中にしているということだ。
総裁選まで1ヵ月あまり、カードも揃ってきた。
「安倍さんのお墨付きを得ようと必死の岸田、嫌われ者だが仕事はできる『隠し球』茂木(敏充外相)、保守派の子分・下村(博文政調会長)、そして元清和研で『安倍ガールズ』の高市(早苗前総務相)。どれも強くはないけれど、派閥をまたがっていることに意味がある」(前出・自民党ベテラン議員)
このうち誰が総理になっても、安倍は構わない。別にリーダーシップを発揮してくれる必要もない。自分の言うことを聞きさえすればいいのだ。
安倍にとって唯一にして最大の不確定要素は、昨年9月、菅を総理に押し上げた張本人の二階が、今回はどう出るかである。

あのとき二階は、菅を「あんたしかいない」と言って担ぎ、流れを作った。途中まで岸田を推していた安倍は、方針転換せざるを得なくなった。いまなお菅の後見人とされる二階のこと、安倍があからさまに「菅おろし」を画策すれば、必ずや邪魔をしてくるだろう。
もっとも現在、あのとき皆がこぞって支持した菅は見る影もない。二階はこの期に及んで「次も菅」と言っているが、それでは党内も国民も納得すまい。
菅も二階も生き埋め
二階の手元に残されたのは、東京都知事・小池百合子というカードだけだ。小池はタイミングよく場に出せば戦局をひっくり返せる「ジョーカー」だが、都合よく機能する確率は低い。小池本人がその気にならなければ、カス札だ。
あとは、来る総選挙でうまく立ち回れば、二階は身動きが取れなくなり、菅は孤立する。