親の私たちに遅れること2週間、8月末に高1の息子がコロナのワクチン接種を受けた。接種当日はピンピンしていた息子だが、翌朝「左腕が痛くて上がらない」とボヤきながら起きてきたので「どんな痛み?」と聞くと、しばらく考えた後「うーん、ピッチャーが1試合完投した後くらいの筋肉痛……かな」という返事。

野球はテレビ観戦専門でピッチャーの経験なんかないくせに、大真面目な顔で言うので爆笑しつつ、ふと思った。10代の子どもたちは、今回のワクチン接種にどんな感想を持ったんだろう。接種した子だけでなく、まだ打っていない子、そして何らかの事情で打てない子にも聞いてみたい。

10代、20代はワクチンに関心がないという報道があったが、実際に東京都が渋谷に設けた接種会場は連日希望者(16~39歳)が殺到した。photo/Getty Images

そんな軽い気持ちで中高生の体験談を集めてみたところ、思いがけない言葉がたくさん返ってきた。息子を含めて都内に住む7人の声。数は少ないが、丁寧に話を聞いてみると、親世代が想像する以上に子どもたちはワクチン接種やコロナ禍をどのように過ごすべきかを考えていた。子どもの体験や現状への思いを、ぜひ多くの人と共有したいと思った。

 

「かかりたくない」よりも「責められたくない」?

今回、話を聞いたのは高1の息子以外は、全員中学3年生の子どもたちだ。調べてみると、息子の同級生に比べて、受験を控えている中学3年生のママたちは比較的動きが早く、接種済み・予約済みの子が多かった。また、昨年息子たちも義務教育最後の年の修学旅行などのイベントをコロナ禍で失ったので、同じような事態に直面している中学3年生に思いを聞いてみたかった。

7人中、すでにワクチン接種を受けたのは5人(息子を含む)。1人は予約済みで9月中には1回目を打つことになっており、もうひとりは「私は打ちたいけど、親が……」という子だ。

徐々に広がる10代へのワクチン接種。大人が思っている以上に子どもたちは考えて選択していた。photo/Getty Images

まずは、接種済みの子に聞いてみた。「どうしてワクチンを打とうと決めたの?」

「決めるってか、親が予約入れてて病院に自動的に連行されたんで」と答えたAさんは、中1の妹と一緒に接種を受けた。
「俺はあっさり接種が終わったんだけど、妹が診察室に入ってから『注射怖い』ってゴネて泣いたらしくて、40分もかかっちゃって。経過観察の15分が過ぎてもずーっと待ってなくちゃいけなくてダルかった」(Aさん/男子)

「毎年インフルエンザワクチンを打ってるし、今回も当たり前だと思っていたから、順番が来たときはうれしかったです。うちは両親と私は打てたんですが、小学5年生の妹はまだ打ててないんですよ。でも、これで打てない妹に家族内感染させるリスクが減ったのでちょっと安心」(Bさん/女子)

「僕の家は母が元看護士なので、ごく普通の流れで『打つよね』『うん』って感じ。ワクチンの接種率が上がったら、いろんな制限も少しずつ解除されて、できることも増えると思うし。予防接種って、自分がかからない、重症化しないのと同時に、多くの人が受けて感染症が蔓延しない環境にすることで、病気や事情があって打てない人を守る役目があるって本で読んだんで、子どもだけど社会の一員としても受ける意味、あると思いました」(Cさん/男子)

感染したくないから、というより『責められたくない』というのがホントの気持ち。なんか若い世代がウイルス拡大の原因みたいに言われているじゃないですか。私たちが感染しても、あんまり重症化しないみたいだけど、もし感染してワクチン打ってなかったら『ほら見たことか』って責められるでしょ。打ったけどかかっちゃった、なら気の毒がってもらえるけど」(Dさん/女子)

実は息子もDさんと似たようなことを言った。

「もし僕がワクチン打ってなくてコロナで死んだら、僕も親もめっちゃ叩かれる。感染したり、それで死んじゃうのを非難されるって訳わかんないけど。もちろんかかりたくないから打つんだけど、もしものときに責められるのがイヤだからっていうのも大きい」(息子)

息子と生活していて日々感じるのは、大人以上に「空気を読むのがうまい」ということだ。そういった世代ならではの考えなのか、比較的症状が軽く済むといわれている年頃だからこそなのか、「重症化しても、病院に入れないかもしれないから」という自分に起こるかもしれない危機感からワクチンを打つ親世代とは少し違う理由で、子どもたちはワクチン接種を決めたようだ。