2010.01.10

北朝鮮のHP「ネナラ」を読む

米朝国交正常化で日本は置いてけぼりになる
佐藤 優 プロフィール

 これは昨年11月14日、東京のサントリーホールで行われたオバマ大統領のアジア外交政策演説における北朝鮮に宛てた以下のメッセージに対する回答だ。

<我々のパートナーと歩調を合わせ、直接外交に支えられながら、米国は北朝鮮に違う将来を提示する用意がある。自国民をぞっとするような抑圧の下に置く孤立ではなく、北朝鮮には国際社会に統合していく未来もありえる。貧困のままではなく、貿易や投資や観光が北朝鮮国民により良い生活への機会を与えるという経済的機会のある未来も持てる。不安定さを増すのではなく、安全と尊敬の未来もだ。この尊敬は、好戦的な態度を通じては獲得できない。完全に国際的な義務を果たすことで国際社会の中に地位を占める国にしか与えられないのだ。/こうした未来を実現するために北朝鮮が取るべき道は明確だ。6者協議へ復帰し、これまでの合意を守り、NPTへ復帰、朝鮮半島の完全かつ検証可能な非核化を行うことだ。そして、日本人の家族に対し、拉致された人たちの行方を完全に明らかにしなければ、近隣諸国との完全な関係正常化もない。これらは、もし自国民の生活を改善し、国際社会に参加することに関心があるならば北朝鮮政府がとることができる行動だ。>(2009年11月14日asahi.com)

 オバマ大統領が言う、<国際社会に統合していく未来>に北朝鮮は大きく舵を切ったのだ。すでに水面下では、インテリジェンス機関を通じた裏交渉が相当進んでいると私は見ている。このままでは、米朝国交正常化が、日朝国交正常化よりも先行すると思う。

 北朝鮮は、オバマ大統領のシグナルを正確に読んでいる。これに対して、日本はオバマ大統領のシグナルをよく読み解くことが出来ていない。アジア外交政策演説で、オバマ大統領は、<我々は歴史的に重要なこの時に、双方が日米同盟を再確認するのみならず、深化することで一致した。両国政府が達した沖縄駐留米軍の再編合意の履行のため、合同の作業部会を通じて迅速に進むことを合意した。>(同右)と述べた。ここで重要なのは、<日米同盟を再確認するのみならず、深化すること>という部分だ。「深化」の中に辺野古への移設の全面見直しをうまく滑り込ませることは可能だ。オバマ大統領が出している助け船に日本政府はうまく乗ることができていない。それは日本外務省にオバマ大統領が出すシグナルを正確に読み取る力が欠如しているからだ。

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著者:佐藤優
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