2009年 にNPO法人キッズドアを立ち上げ、貧困、虐待、障がい、いじめ、⾃殺、不登校、過疎、少⼦化、ネグレクト(育児放棄)など、子どもをめぐる問題点から悩む方々を支える活動を続けている渡辺由美子さん。立ち上げから12年経つ今も、貧困問題は解決するどころか、コロナの影響もあってますます格差が広がっているという。現状と解決しない理由を考察し、改めて渡辺さんに寄稿いただいた。

 

年収200万円未満、貯蓄額10万円未満での子育て

「食料も困っていますが、支払いが止まっているので、給付金があればと願うばかりです」

これは、私が運営するNPO法人キッズドアが企画した、新型コロナウィルス 感染症に感染したり、濃厚接触になったり、保育園や学校が休校になって仕事に行けなくなってしまった困窮子育て家庭のための食糧支援の申込に寄せられた声です。

2020年3月2日の全国一斉休校、その後の緊急事態宣言以後、困窮子育て家庭は大変厳しい状況が続いています。キッズドアでは、コロナ以前は、困窮家庭の子どもたちに無料の学習会や、簡単な食事も提供しながら勉強を教えたり、様々な相談にのる居場所の運営などを行なっていました。コロナ禍でも、感染対策を十分に行いながら、また、オンラインなども活用して、学習支援は継続しています。しかし、それだけでは、ただでさえ大変な状況の子どもや保護者がますます深刻な状況になってしまう、なんとかしなければと、2020年10月に「ファミリーサポート事業」という、日本全国の困窮子育て家庭を支える事業を始めました。

2021年9月1日現在、その事業には2838世帯のご家庭が登録してくださっています。末子が高校生以下のお子さんがいるご家庭を対象としており、ご登録家庭の9割弱が母子家庭です。2020年の収入は200万円未満が65%、300万円未満までで88%、2021年6月時点の貯蓄額10万円未満が51%と非常に苦しい生活をされています。寄付を集めては、食料品や文具などを送っていますが、全く足りていません。

給食がなくなる夏休みは、食べ盛りの子育て家庭にとってはコロナ禍でなくても大変な時期でした。それでもまだ昨年は、一人10万円の特別定額給付金があったため、「この給付金でなんとか夏を乗り越えた」というご家庭がとても多かったのです。総務省の調査では特別定額給付金の多くが貯蓄に回ったというような結果も発表されていますが、困窮子育て家庭にとっては、まさに「命をつなぐ」お金でした。子どもの貧困やシングルマザー支援を行う団体や研究者とともに、ずっと政府に「夏休みは本当に危険なので、なんとか夏前に困窮子育て家庭に現金を出して欲しい」と要望を出してきましたが、とうとうそれは実現されないまま、夏休みを迎えました。

給食がその日の食事の要という家庭もある。「ご飯は朝は食べず、昼まで我慢をすることになっている」という声もキッズドアに寄せられるという Photo by iStock