女優でモデルの高橋メアリージュンさんの、現実と向き合い、人生を楽しく生きる秘訣を伺う連載第1回は、女優としての仕事についてお届けします。前編では、8月12日に放映されて話題を呼んだ『緊急取調室 4thSEASON』について伺いました。後編では、2021年の4月クールで出演していた『大豆田とわ子と三人の元夫』(TBS)のエピソードや、エンターテインメントの基礎を教えてくれたというボイストレーナーの先生の話をお伝えします。
*『大豆田とわ子と三人の元夫』7話のネタバレも含みます。ご了承ください。
「大豆田とわ子」7話の台本の衝撃
ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』はとても楽しい現場でした。松たか子さんをはじめ、松田龍平さん、岡田将生さん、角田晃広さんと、おっとりしたいい人しかいないんですよ。ドラマチームで『VS魂』に出演した時、風間俊介さんから「このチームの仲がいいというのはめちゃくちゃわかった」と言われたくらいです。

私が演じたのは、松さん演じる大豆田とわ子社長の部下・松林カレン。社長のことが大好きな役柄だったのですが、私自身、松さんが大好きなので「わざわざ役作りをしなくてもできるな~」と楽しく撮影をしていました。ところが第7話の台本をもらってビックリ。なんと、カレンが社長を裏切ると書いてあるじゃないですか! そんな展開になるなんて聞いていなかったので、「イヤだ、イヤだ、撮影の日が来てほしくない!」と悶々としていました。
それまで松さんとも楽しくおしゃべりしていたのに、罪悪感で気まずくなって……。でも、逆にそのリアルな感情が良かったんでしょうね。複雑な思いが入り混じった状態で演じることができました。
演じるにあたっては、カレンなりの正義を自分の中で作りました。セリフでは会社や部下のためということでしたが、自分だったら何を一番守りたいだろうか、何を守るためなら大好きな人を裏切れるかと考えた時、「家族」という答えが出て。なので「カレンの母親が病気になって、私が手術費用を払わなかったら死んでしまう」くらいの設定を自分の中で作りました。そこまでしないと社長のことが大好き過ぎて、裏切れなかったんです。演技とはいえ、すごくつらかった記憶があります。
松さんは、演技の素晴らしさはもちろんですが、人柄も尊敬できる素敵な方です。めちゃくちゃ素晴らしい女優さんなのに、さりげなく周囲に溶け込むフラットなたたずまいで、ピリピリしたところが一切なくて。その場にいる全員が、松さんがかもし出す穏やかな空気感に癒されていたと思います。