「美しい言葉」には注意せよ
行き過ぎた経済活動の反省から、世界中でさまざまな宣言や目標が掲げられています。「格差の是正を」「クリーンなエネルギーを」「持続的な成長」「脱炭素」……。立派なコミットメントを掲げる組織や会社が増えています。
しかし、その多くはお題目に終始しています。具体的な活動に落とし込んでいる会社がどれだけあるか。「美しい言葉」には要注意です。
国連が2015年、2030年までに世界が取り組むべき目標として掲げた「SDGs」(持続可能な開発目標)も近年盛んに取り沙汰されていますが、注意すべき言葉です。
SDGsは17のゴール(目標)を掲げており、「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」「すべての人に健康と福祉を」「質の高い教育をみんなに」「働きがいも経済成長も」「気候変動に具体的対策を」「平和と公正をすべての人に」と耳ざわりのいい言葉が並んでいます。

「弊社は近年、SDGsに力を入れた経営を展開しています」
「それはいったいどういうことでしょうか?」
「継続して会社が発展していくような目標を立ててやっております」
当たり前のことです。何をいまさら言っているのか。逆にそうした目標を立ててこなかった会社があるんですか。立派な看板を掲げて対外的にアピールするのもけっこうですが、問題はそこに「中身」がちゃんと伴っているかどうかです。
立派な目標がどれだけ貧しい人、非正規社員、職業を失った人の役に立ちましたか。
世間の流行りものに飛びつくだけで、仕事をした気になっていませんか。やっている当事者自身が変わっていないのに、活動の中身が劇的に変わるわけはありません。各国、各企業がこれまでやってきたことを「SDGs」と名前を変えているに過ぎません。
「ESG投資」(環境・社会・企業統治に対して積極的な取り組みをする企業に投資すること)や「グリーン・ニューディール」(温暖化防止と経済格差の是正を目的とするアメリカの経済刺激策)も同様です。
どんどんやってください。
でもどれほどの企業が本当に「実行」しているでしょうか。