2021.09.25
# 企業・経営

「アジアNo.1アリーナを神戸に」“民設民営”で挑む新アリーナ計画に「勝算あり」なワケ

大島 和人 プロフィール

気になる施設の売上目標だが、渋谷社長はこう述べる。

「僕らは年間30億円前後(の売上を)狙っています。これを実現しないと民設民営のアリーナは実現できないと思います。今までの公設アリーナでは(大阪市が所有する)大阪城ホールでも売上が20億ちょっと。稼働率90何%でも、20数億しかないんです。僕らは30億前後を目指すので、価値を作り出す別の何かをやらないといけない」

大まかな収入の規模感はこうなる。

「興行における1日のチケット売上が5000万円だとしたら、その15%程度がホールに払う(標準的な)費用らしいです。つまりアリーナ側の収入は仮に1日で750万として、年間200回の興行が入れば15億円の売上になりますね」

単なる“貸し館”以外の売上を立てるには既存のアリーナにない付加価値が必要で、そこが今まさに議論されているポイントだ。スマートバリューはITを活用した社会問題の解決を本業とする企業で、そのノウハウも生かされる。

 

一体運営がもたらすチームへのメリット

チームにとって大きなメリットは、施設との一体経営だ。

「プロスポーツって企業がダメになったら簡単にチームを手放すじゃないですか? そうならないように、自分たちで稼げないと話になりません。でもチームで稼ごうとすると、売上の構成はチケット、スポンサー、ファンクラブ、物販、スクール、放映権などの分配金という6項目しかない。それだと限界があります。

アリーナを自前で持って、付随的なマネタイズのモデルを作り上げることで、チームの財源にもしたいと考えています。あとパートナー協賛営業をアリーナとセットにして売りに行くと売りやすいんです。クラブの価値を最大化する意味でも、ハードウェアを持っている相乗効果がものすごく大きい」

VIPルームは数十室用意される予定だ。いわば“接待需要”を見込んだものだが、旧来型の体育館にはそもそもVIPルームという概念がなかった。Bリーグは新しい施設要件の項目に、VIPルームの設置を入れている。

「VIPルームはそんなに心配していなくて、口頭ベースですけどもう何室か引き合いをいただいています。第一突堤と第二突堤間のウォータールームが利活用されることも大きいですね。JリーグのVIPルームはJリーグの試合のみなので、年間二十何日。ここは30日のバスケット+自主興行を何日か作る予定です。それに場所が良くて、目の前で花火が上がるんですよ。北側ではルミナリエという光のイベントもあります。そういった日にVIPルームを使えるようにしてあげれば、多分50日くらいになります。

あとこれはチャレンジなんですけど、音楽興行のときもプロモーターと演者さんさえよければ、『チケットさえ買えばVIPルームを使っていい』と案内もできます。有名なアーティストのライブをVIPルームでお酒飲みながら楽しめたら、すごくいいじゃないですか(笑)」

新アリーナの成功に向けて懸念材料があるとすれば、それは西宮ストークスの実力と人気かもしれない。2020-21シーズンはB2西地区を制したものの、プレーオフに敗れB1昇格を逃した。新型コロナの影響があった今季は別にしても、年間の平均入場者数は過去最多で1,868人(2017−18シーズン)にとどまっている。魅力的なチーム作り、集客は欠かせないポイントだ。

渋谷社長もこう口にする。

「一番難易度の高いのは、間違いなくそこです。私が関わり始めた当初と比べると、間違いなくいいクラブになっていますが、でもまだまだです。現在は固定座席が1,344席しかない西宮中央体育館に仮設席を設置しても最大2,000人強。それを満席にするのに四苦八苦しているクラブが、バスケなら8,000人を収容できるアリーナを持つわけですから」

スポーツやエンターテインメントの関係者が“夢のアリーナ”と声高に提唱をしても、現物を体験していない我々が価値をリアルに感じ取ることはなかなか難しい。しかし渋谷の言葉から、彼がアリーナの価値やコスト構造を深く掘り下げ、可能性に確かな希望を持っている様子が伝わってきた。

新アリーナの完成が予定される2024年はもう遠くない未来だ。美しい港町を彩る景色として、人と文化を呼び込む場として、新アリーナに命が吹き込まれる日を楽しみに待ちたい。

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