松尾 私が独立して〈エトセトラブックス〉を作るきっかけのひとつも松田さんの一言でした。『おばちゃんたちのいるところ』の英語版の出版が決まった頃ですよね。

松田 そうそう。〈Tilted Axis Press〉というイギリスの出版社から翻訳出版されることが決まって。ちょうど2017年の夏にロンドンに行ったんです。〈Tilted Axis Press〉は主にアジアの本を紹介する、フェミニズムにもとても意識的な独立系出版社です。

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松尾 松田さんが帰国してすぐ、「松尾さんも独立すればいいじゃないですか」ってカジュアルに言われたんです(笑)。

松田 私、ぜんぜん覚えてないんですよ(笑)。イギリスにはその頃何度か行く機会があって、その度に松尾さんに〈Persephone Books〉とか、フェミニスト書店やインディペンデント出版社の話をしていたんです。

松尾 その時はいやいや自分がまさか独立なんてって思っていましたが、同じ年の10月に伊藤詩織さんが『Black Box』で自身の性被害を訴え、#MeTooが始まり、2018年の1月には「反トランプ」を掲げたウィメンズ・マーチが行われた。日本でも過去10年ぐらいSNSで徐々に可視化されてきたフェミニズムのうねりがまとまって見えてきたんです。

私が手掛けてきたフェミニズムの本も、ある程度の売り上げや、SNSでの感想が返ってきて、必要としてくれている人たちがいることがわかった。であれば、もっと直に読者に届ける方法があるんじゃないかと。その時に松田さんの言葉が背中を押してくれました。社名をつけてくれたのも松田さんです。

松田 何かいい案があったら教えてくださいと松尾さんに言われていて、でも本人が決めるのが一番と思っていたのですが、本当にギリギリまで名前が決まっていなかったので(笑)。〈エトセトラブックス〉のエトセトラは、ジュディス・バトラーの『ジェンダー・トラブル』という本にある「無限のエトセトラ」という言葉からとりました。

松尾 名付けてもらったことによって、「これまでエトセトラ、『その他』扱いされていた無限の女性の声を届ける」という〈エトセトラブックス〉の方針が固まったんです。