松田 女性を自分たちの役に立つものとしてしか考えていないから、「能力を高める」とか「女性活躍」って言葉になるんでしょうね。

松尾 「女性を抑さえつけている性差別を取り払いましょう」というのがジェンダー平等であって、その結果、女性たちの力が引き出されればエンパワーメントになる。それは「能力強化」とは意味が違うし、さらに言えば、能力がなくてもいい。私が私であって、人間として生きたいという女性の人権を認めろという最低限の話なんですから。

-AD-

松田 それなのに女性活躍の話になってしまう。一人一人が、自分の思うように生きられることが大事なのに。

松尾 フェミニズムにしろ、ジェンダー平等にしろ、これだけ捉え方にズレがあるのはなんでなんだろう。

松田 日本は歴史や社会構造を教える場も、話し合える場も少ないですよね。政治の問題と自分の問題、過去と現在、すべてがつながっていると学ぶ機会が必要です。差別の歴史を知らないから、女性が不平等を訴えても、逆に男性差別だと言い出す人たちがいるんじゃないかと。

松尾 3月に『女の子だから、男の子だからをなくす本』(ユン・ウンジュ著、イ・へジョン絵、すんみ訳)という韓国のジェンダー絵本を翻訳出版しました。韓国は日本と似たような家父長制が強く残る社会の問題を抱えながら、ジェンダーに対する意識やフェミニズムは日本の一歩先を進んでいるので、すごく響くんです。

「男の子たちへ」というページでは、傾斜のついたサッカー場の上側に男子チーム、下側に女子チームがいるといったイラストで、ジェンダー不平等を説明したり。小学3年生ぐらいから自分で読める本なんですけど、男の子が読むと厳しく感じる部分もあると思います。

松田 そうやって男の子に厳しく言わないといけない世界に、大人がしてしまっているんですよね。

松尾 今はもう男女関係なく、ランドセルも誰でも好きな色を選べるよ! みたいな口当たりのいいことばかり言ったところで、実際はまだ子どもたちが自分の生き方を自由に選べない社会なんだから。性差別を生んでいる構造を大人が変えないと。