私たちが働いた稼ぎを横取りする「職場の独裁権力」を倒すには

会社を所有すべきなのは、本当は誰なのか
ヤニス・バルファキス プロフィール

論戦は終わらない

そんなふうに議論は続いた。アイリスはあえて反対意見を述べたかと思うと、コスティの世界の妥当性や魅力を強く擁護して、ふたつの役割を交互に務めた。いっぽうのイヴァは、取り憑かれたように断固たる敵意を示した。中央銀行が個人口座を開設して、市民に現金を一律に支給する制度を熱心に非難したかと思うと、次の瞬間には、企業は利益ではなく収入に応じて税金を納めるべきだ、という考えを揶揄した。コスタとその相も変わらぬ平等主義を、アイリスが攻撃することもあった。その時ばかりは、イヴァもアイリスに同意するほかなかった。

 

当のコスタは時差ボケが激しく、傍観役に甘んじ、やがてカウチのうえでうとうと眠り込んでしまった。アイリスとイヴァの論戦は続き、夜も更けていった。(翻訳/江口泰子)

今回の連載はここまでです。アイリスとイヴァが抱く疑問や希望は、このあと「もう一つの世界」で出会うことになる自分の分身との対話でどう変わるのでしょうか。そして「資本主義の終焉」はそんなに実現不可能なことなのでしょうか。続きは書籍をご覧ください。